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相手方保険会社の言いなりの医師や病院


治療費を保険料で内払いを受けているせいか、相手方保険会社に言われるままの医師や病院があります。
例えば、被害者も治療効果を感じており、医師もまだ治療が必要と言いながら、相手方保険会社から治療費の打切りを伝えられた途端に、掌を返したように、もう通院しなくてよい、症状固定だとの診断をする医師もいます。
実際に「保険会社から治療費が打ち切られるから、通院もこれで終わりね。」と明言する医師もいます。

確かに、ほとんどの病院では、保険会社から、同じ治療であるにもかかわらず自由診療により、社会保険診療の2倍の診療報酬を得ていますので、治療費の支払いが打ち切られた場合、その後被害者が自由診療で通院を継続しない限り、報酬は少なくなります。
また、保険会社からの度重なる面談の申出や医療照会を嫌って、保険会社の言いなりになっているかもしれません。

一方で、相手方保険会社は、支払う保険金をなるべく減らそうとしますので、医学的見地とは無関係に治療費の打ち切りを通告する場合も多々あります。

中には、症状の重篤性や治療効果に関係なく、むち打ちの治療は3か月だからなどといって、強引に事故後3か月で治療を打ち切る医師もいました。
その際、「中止」との診断ならまだしも、勝手に「治ゆ」「症状固定」などと診断することで、その後の後遺障害認定や賠償の場面で、被害者に極めて不利に働くことも多々みられます。

治療費の内払い打ち切り後、健康保険を使用し自費で通院したうえで、症状固定と診断したにもかかわらず、後遺障害診断書上の症状固定日として、打ち切り日を記載する医師もいます。

交通事故の賠償の場面では、治療効果があり通院の必要性があるかについては、一義的には医師の判断が尊重されます。
治療の必要性や相当性がないにもかかわらず、徒に漫然と通院を継続することは決して望ましいことではありませんが、保険会社の言いなりではなく、自らの診断内容に信念と自信をもって、保険会社には毅然と対応していただくことが望まれます。


未だに交通事故には健康保険が使えないと誤信させる病院


交通事故による傷病の治療でも、健康保険は使えます。
このことは、古く半世紀近く前の昭和43年の当時の厚生省通達において明らかにされています(昭和43年10月12日保険発第106号)厚生省保険局保険課長国民健康保険課長から各都道府県民生主管部(局)長宛)。
「なお、最近、自動車による保険事故については、保険給付が行われないとの誤解が被保険者の一部にあるようであるが、いうまでもなく、自動車による保険事故も一般の保険事故と何ら変りがなく、保険給付の対象となるものであるので、この点について誤解のないよう住民、医療機関等に周知を図るとともに、保険者が被保険者に対して十分理解させるよう指導されたい。」

自由診療により高い報酬を得たいからか、未だに交通事故では健康保険は使えないなどと虚偽を述べ、被害者に高い自由診療での治療費を負担させる病院もあります。

診療報酬は点数で計算され、健康保険は1点10円で計算される一方で、自由診療で1点20円で計算される場合が多く、健康保険の場合一般の自己負担額は3割ですので、自由診療ですと、自己負担額は健康保険の6倍以上になります。

病院から交通事故では健康保険は使えないと言われたら、上記通達を示したうえで、健康保険での診療を求めてください。


適切な診断ができない医師


交通事故による骨折や靭帯損傷など、整形外科分野を受傷したにもかかわらず、かかり付けの内科や外科など診療所にそのまま通院してしまうケースがあります。
その病院で、適切な診断と治療をしてもらえれば良いのですが、良く見られるのが、いざ後遺障害診断書を記載してもらう段になって、整形外科ではないので、神経学的検査などできない、MRI画像の読影ができないので、画像所見が書けないなどと言われてしまうことがあります。

自賠責による後遺障害等級認定は書面審査でなされるので、いかに適切な後遺障害診断書を記載してもらうかが、その結果を大きく左右します。
関節の機能障害では、可動域を適切に計測してもらうことが最も重要ですが、日本整形外科学会などで定められた「関節可動域表示ならびに測定法」によらずに関節可動域が測定されたため、とんでもない数値が後遺障害診断書に記載されることもあります。

また、腱反射テストなどの神経学的検査を実施していないにもかかわらず、後遺障害認定や裁判でのその重みを省みることなく、安易に「神経学的検査異常なし」と診断する医師もいます。

整形外科外を受診し頚椎の圧迫骨折を見逃され、整形外科のみを通院したことにより高次脳機能障害が見逃され、整形外科を受診していても、患者の訴えを重要視せず単なるむち打ち損傷とし、脊髄損傷が見逃されることもありました。

受傷当初から終診時まで一貫して「全身打撲」などと曖昧な診断名が付されたために、被害者は受傷当初から終診時まで一貫して右肩部の痛みを訴えていたにもかかわらず、症状の一貫性の証明が不能になったこともあります。

被害者が、後遺障害診断書を記載して欲しいとお願いしているにもかかわらず、「自覚症状だけで、後遺障害認定は受けられないから書かない。」などといい、被害者に後遺障害認定を諦めさせる医師もいます。
自賠責調査事務所の顧問医や、裁判所の鑑定指定医に登録されているなど、後遺障害認定実務に通じておられれば良いのですが、良く知らずに安易に認定を受けられないなどと言い、後遺障害認定の機会を奪うのは問題であると思います。
後遺障害非該当であった場合に責任を負うことを避けるためか、「一応後遺障害診断書は書いたけど、認定は受けられないからね。」と言い、被害者を不安に陥れる医師もいます。

医師と弁護士では専門分野が全く違い、後遺障害認定手続は残存した症状を損害としてどう評価していくかの法的な問題ですので弁護士の専門分野です。
医療について全く素人である我々弁護士が、患者さんに対し「その症状は治療しても治りませんよ。」と言い、治療の機会を奪ったらそれこそ大問題です。

最近では、インターネットにより受診している医師の先生の専門分野や得意が明記されていることもございます。
病院が力を入れている分野や特定分野の専門医の先生もすぐに見つかります。
特定分野の専門の先生ほど、ご自身の診断内容や治療内容に絶対の自信と技量をもっておられ、
後遺障害認定や訴訟の場面での医療照会や意見書の作成の際に、絶大なるお力添えをいただけることが非常に多くあります。

交通事故後の治療に際しては、できる限りその分野の専門医の先生を受診していただくのが宜しいかと存じます。


診断書や診療報酬明細書作成料が異常に高額な病院


交通事故賠償では、証拠とするため、医師の先生や病院に、各種診断書や診療報酬明細書の作成の煩をいただくことになります。
一般に後遺障害診断書を作成いただく場合の作成料は、
総合病院や大学病院など文書作成料が定まっている場合は3000円から5000円程度で、クリニックでも5000円から高くても1万円程度の請求に留まることが通常です。

しかし、中には後遺障害診断書作成料として1枚2万円以上の請求する病院もございます。
その記載内容が意見書にも比肩する高度な専門的知見に及ぶものでしたら、それでも安いくらいでしょうが、高額な請求をされるほど、その内容は適当かつ杜撰な場合が多いように思えます。

最近では、大病院などで診断書などの文書作成料を明記して公示している病院もありますが、これら書面は損害の証明のために必須になりますので、多くの場合、病院の言い値を支払わざるを得ません。

当事務所でも、意見書などで高度の専門的知見をご教示いただく際には、書類をご作成いただくお手間や文献調査のためのお時間、その専門的見解の優れた価値などを十分に理解し、意見書作成料として数万円から数十万円にも及ぶ費用を喜んでお支払させていただいております。

しかし、診断名「頚部捻挫」、自覚症状「首の痛み」、他覚所見「なし」、予後「不明」、こんな杜撰な内容に2万円の価値が本当にあるのか疑問に思います。


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