接骨院・整骨院等の施術費の支払いが認められる要件

交通事故の症状の緩和のために接骨院や整骨院で施術を受けることは良くありますが、近時、相手方保険会社と、施術費の支払いを巡って争いになることが多発しています。
一般に施術費が認められるためには、「症状により有効かつ相当な場合、ことに医師の指示がある場合などは認められる傾向にある」(平成29年版赤い本上巻3頁)とされ、医師の指示については、「施術を受けることによる改善の可能性が否定できないことからとりあえず治療を受けることを承認するという消極的なものも含まれる。このような医師の指示・承認がなくとも、改善効果があれば賠償を認める例もある。」(青本25訂版11頁)とされています。

このように一般的には施術費用は、医師の指示や承認があり、その施術が症状の改善に効果があるような場合に認められるものですが、実務上、相手方任意保険会社は、事前に医師の指示や承認を診断書などで明示しなくても、問題なく接骨院等の施術費を内払いしてくれることも多いのです。

今回ご紹介する事案では、第1事故で追突に遭い頚や腰を痛め、相手方保険会社である東京海上日動火災保険は、何の問題もなく接骨院の施術費用を支払ってくれていました。
しかし、この依頼者は、第1事故の治療中に、自転車で車から衝突を受けるという第2事故に遭い、右肩を骨折したほか、同様に頚と腰を痛め症状が悪化したので、接骨院での施術を希望しましたが、第2事故相手方保険会社であるソニー損保中部第1サービスセンターの担当者は、不合理な理由で支払いを拒否するという、極めて不誠実な対応をしました。
以下、事案の詳細を記載し、私がとった苦情申立て方法をご紹介します。


ソニー損保の不誠実な対応


依頼者は、追突事故により頚や腰を痛め、接骨院で治療を続け、その施術費については問題なく、第1事故の相手方任意保険会社である東京海上日動火災保険が支払ってくれていました。
その折、自転車に乗車中対向車線から右折してきた自動車に撥ねられるという第2事故に遭い、右上腕骨折の他、さらに頚・腰部を痛め、症状が悪化したため、同じ接骨院での施術を希望し、第2事故相手方任意保険会社であるソニー損保に対し、施術費の内払いをするよう求めました。

ソニー損保中部第1サービスセンターの担当者は、私からの電話連絡に対し、「わかりました。接骨院と連絡を取ります。」と言いましたので、問題なく、施術費の支払いが認められるものと思い、担当者から連絡があるまで依頼者には接骨院への通院を待ってもらいました。
ところが、5日ほど経過しても何の連絡もなかったため、再度担当者に連絡をすると、「まだ接骨院に連絡をしていません。すぐに連絡をします。」と話しました。
その2日後、突然担当者から書面が届き、そこには次のように記載がされていました。

「接骨院のご受診希望と伺いましたが、医師の指示・指導・管理の下のご通院となるか一度ご確認下さいませ。」

担当者は二度も接骨院に連絡すると約束したにもかかわらず、これを放置したうえで、そのことに何らの説明もせず、突如、書面をもって「医師の指示・指導・管理」を求めてくるなんて本当に不誠実な担当者だと思いましたが、ソニー損保なので仕方がないと思い直し、改めて冒頭に示しました医師の診断書を取付けたうえで、担当者に送付しました。

ところが、担当者から書面で思いもよらぬ回答が来ました。

「診断書ご記載の内容を確認いたします限り、●様のご希望による接骨院ご受診のようにお見受けいたします。 医師が必要性を認めたという内容ではないようですので、弊社にて接骨院の治療費一括対応につきましてはお受けいたしかねます旨を、ご連絡申し上げます。」

冒頭で示しました診断書の、
「右肩に関しては他院にてリハビリを継続しております。本人よりその他の部位に関して●接骨院での通院加療継続したいとのことでしたので、引き続きお願いいたします。」
との記載を素直に読めば、医師が施術の必要性を認めたからこそ、接骨院に対し、引き続き通院加療を継続するようお願いしたとしか考えられず、「医師が必要性を認めたという内容ではない」との担当者の理由は詭弁というほかありません。

また、そもそも担当者は、「医師の指示・指導・管理の下の通院」であるか確認せよと指示してきたのであって、「医師が必要性を認める」ことを確認せよとは一言も言っていませんし、上記診断書の文言によれば、「接骨院で引続き通院加療をお願い」しているのですから、医師の指示・指導・管理の下の通院であることは明らかです。

ここまでくると、ソニー損保は最初から施術費など支払うつもりはなく、難癖をつけてその支払いを免れようとしているとしか思えません。


ソニー損保に対する対抗策


上記のとおりソニー損保中部第1サービスセンター担当者の対応は著しく不誠実で、かつ施術費の内払いを拒んだ理由も極めて不合理と言わざるを得ません。
また、依頼者は、当初担当者が接骨院に連絡をいれると約束し、施術費の内払いが得られるものと信じて待っていましたので、当初の申入れから最終的に施術費の支払いを拒むまで2週間以上、施術ができず治療が遅れてしまいました。
最初から支払わないとのことであれば、人傷社にお願いしたり健康保険を使うなどしてすぐに通院は可能でした。

ただ、まだ内払い段階ですし、まだ通院前で損害自体も発生しておらず、施術費を支払うかは基本的には保険会社の判断に委ねざるを得ません。
そこで、私は、ソニー損保お客様相談室へ改めて内払いを請求するのと併せて、今回初めてそんぽADRに対し苦情申立てを行うことにしました。

ところで、私は、保険会社の担当者が法や実務慣行に照らし、あまりにも不誠実かつ不合理な対応をした場合には、担当者や支店レベルに抗議しても意味がありませんので、書面をもって保険会社本社宛に抗議したうえで、悪質な場合は金融庁監督局にも併せて報告しており、これまでそんぽADRは利用したことはありませんでした(ブログに記載した以外にも様々な抗議事案があります)。
これにより、日新火災以外は、上席から面前もしくは電話での謝罪があり、担当者が変わり、不適切な対応は改善されてきました。

しかし、損保側代理人をしている知人から、そんぽADRを通した苦情申立ては、顛末報告義務があるなど効果的である旨を聞きましたので、今回初めてそんぽADRを利用することにしました。
下記に今回提出した抗議文の全文を掲載しましたので、ソニー損保の対応が明らかになりましたら改めて報告いたします。

別件でソニー損保中部第1サービスセンターの他の担当者ともやり取りしていますが、この方は本当に丁寧で誠実です。
私も大多数の相手方損保会社の担当者と信頼関係を築きながら、日々被害者のために適正かつ公正な解決に努めています。
本件のように一部の担当者の身勝手な不誠実な対応により、被害者のために懸命に頑張っているその他の担当者や会社の評判自体が汚される結果になることは本当に悲しく思います。

平成29年9月22日追記

 抗議の書面を提出した2日後、この担当者の上席の方から、謝罪と接骨院の施術費の内払いを認める旨の連絡がありました。
今回のソニー損保中部第1サービスセンターの対応は非常に迅速でした。

一般に通販型の損保会社サービスセンターの担当者は、従来型の担当者に比べ多くの事件を抱えていると聞いたことがあります(最近では、ある通販型の保険会社で、従来型保険会社担当者に業務委託している場合もみられます。)。
そのため、担当者が現場レベルで一件一件の事案を丁寧に検討する余裕はないのかもしれませんが、今一度、損害保険会社の社会的使命と役割に立ち返り、万が一、なんでもかんでも不払いにすればいいとの現場意識があるのであれば、一刻も早く改めていただきたいと強く願っています。 



シェアする

ブログの記事一覧へ戻る