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むち打ち損傷(頚椎、腰椎捻挫等)

末梢神経障害と神経伝導速度・筋電図検査等の解説

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末梢神経障害の後遺障害等級認定のポイント

交通事故に伴う骨折・脱臼や強度の打撲、神経根引き抜き損傷などにより、上肢や下肢の末梢神経が障害され、手足の痛み・しびれ、感覚麻痺、脱力感、筋力低下、関節可動域制限、巧緻運動制限などの症状が残存することがあります。
この場合の自賠法上の後遺障害等級は「局部の神経症状」として、12級13号もしくは14級9号の対象となりますが、12級13号の認定を受けるためには、症状が「他覚的に証明できること」が必要とされます。

脊髄から延びる神経根から神経が引き抜かれた場合、脊髄造影やMRI画像等で捉えることは可能ですが、末梢神経の損傷自体をレントゲン・MRIなどの画像で視覚的に捉えることは不可能です。
そのため、末梢神経損傷は、徒手筋力テスト(MMT)、感覚(触覚・痛覚・温度覚・振動覚)検査、Tinel(ティネル)徴候などのほか、筋電図検査・神経伝導速度検査などの電気生理学的検査により、「他覚的に証明」することになります。

ここでは、末梢神経損傷の主な類型と特徴及び筋電図検査・神経伝導検査などの電気生理学的検査などにつき解説していきます。

ニューロパチー、ティネル徴候とは

【ニューロパチーとは】
ニューロパチーとは末梢神経の正常な伝導が障害された状態をいいます。
神経細胞は、軸索(じくさく)と呼ばれる突起で他の神経細胞と繋がり、情報のやり取りをしています。また、軸索には髄鞘(ずいしょう)と呼ばれるさやがあり、軸索を保護したり、情報のやりとりをスムーズにしています。
ニューロパチーには、軸索の損傷を原因とする軸索変性と髄鞘の損傷を原因とする脱髄性に分けられます。
そして、交通事故外傷では、末梢神経線維が切断・挫滅し、細胞神経との連絡が断たれる軸索変性の一種であるワーラー(Waller)変性が良く知られています。

【ティネル(Tinel)徴候とは】
切断された神経が再生する過程では再生した軸索が髄鞘に覆われておらず、その部分を軽く叩打すると、感覚領域にチクチク感や蟻走感が生じます。
この徴候が生じていれば、神経の損傷があり、これが再生過程にあることが推測できますので、末梢神経障害が疑われる場合、早期にティネル徴候が生じているかの検査を経時的に受けてください。

主な末梢神経損傷の病態

【腕神経叢(わんしんけいそう)損傷】
脊髄から上肢に繋がる腕神経はC5神経からT1神経ですが、これらは頚肩部で複雑に分枝と吻合を繰り返す腕神叢(わんしんけいそう)を構成します。
交通事故で、上肢が不自然な形で投げ飛ばされたり、頭頚部や肩甲部に強い牽引力が生じると、この腕神経叢間や神経根で腕神経が損傷されます。この病態を腕神経叢損傷といいます。

腕神経叢損傷は上位型麻痺と下位型麻痺にわかれ、上位型麻痺は、肩の外転・肘の屈曲・前腕の回外運動が障害され、下位型麻痺は、手指の麻痺が生じます。外力が強い場合は、上肢全体の機能障害が生じます。
神経根引き抜き損傷は、脊髄造影やMRIで捉えられます。また、軸索反射テストが有用です。
しかし、神経自体はMRI等の画像で捉えられないので、電気生理学的検査(筋電図・神経伝導速度検査)を施行し、確定診断を得ます。

  • 橈骨(とうこつ)神経麻痺

    【橈骨(とうこつ)神経麻痺】
    橈骨神経は上肢の伸筋を支配するため、橈骨神経が麻痺すると、手関節の背屈、手指の伸展が麻痺し、下垂手(drop hand)の症状を呈します。
    また、上腕外側から前腕中心部、母指から中指にかけての感覚麻痺が生じます。
    上腕骨骨折に合併することがあります。

  • 尺骨神経(しゃっこつしんけい)麻痺

    【尺骨神経麻痺】
    尺骨(しゃっこつ)神経は、尺側の深指屈筋、小指球筋、尺側の虫様筋、骨間筋、母指内転筋などを支配するため、環・小指は鉤爪変形(claw deformity)し、小指球筋、骨間筋が委縮します。
    また、小指全体と環指尺側半分から手の尺側の感覚麻痺が生じます。

  • 正中神経麻痺・手根管症候群

    【正中(せいちゅう)神経麻痺
     ・手根管(しゅこんかん)症候群】
    正中神経は、回内筋、浅指屈筋、橈側の深指屈筋、長母指屈筋、母指球筋などを支配するため、遠位での障害は母指球筋の委縮(猿手ape hand)、母指の橈側外転麻痺が生じます。
    近位での障害は、上記の症状に加え、母・示指の屈曲障害、前腕の回内障害が生じます。 また、示指・中指の先の感覚麻痺が生じます。
    手首の狭いトンネルである手根管で正中神経が絞めつけられる(絞扼)手根管症候群も正中神経麻痺に位置付けられます。

【腓骨(ひこつ)神経麻痺】
腓骨神経は、大腿後部で坐骨神経から分枝し、長短腓骨筋、前脛骨筋、長短母趾伸筋、長短趾伸筋を支配するため、趾部の背屈、足部・足関節の外反制限が生じ、下腿外側、足関節背側、母趾・第2趾間背側の感覚麻痺が生じます。
神経への直接の打撲や圧迫がなくても、膝を外反したり、下腿を内反した際の牽引力でも生じます。

電気生理学的検査(筋電図検査・神経伝導検査)

【筋電図検査】

〈検査の意義〉
筋力低下の有無の確認
筋原性か神経原性の症状かの鑑別
損傷神経の同定

〈検査方法〉
針電極を検査筋に刺入し、筋肉の活動を電気的に記録する検査
刺入時、安静時、最少収縮時、最大収縮時の各電位をみる

〈検査結果〉
末梢神経障害が生じると筋繊維は脱神経(筋が神経の支配を受けなくなった状態)を受ける。
脱神経が部分的で慢性化又は再生しない場合、電位は高振幅長持続化する。
筋疾患では運動単位電位は小さくなり、振幅は200μV以下、持続は5msecになることが多く、波形も虫食い状になる。

刺入時では、筋原性の障害の場合電位の持続時間が長くなる。
通常、安静時には、放電はみられないが、脱神経が生じた筋では、線維自発電位や陽性鋭波などの自家放電(脱神経電位)が計測される。
最少収縮時の正常な振幅は0.5~2mA、持続時間5~10msec、2~5相の活動電位が計測されるが、神経障害時には、多相性で持続が15msec以上の電位が計測される。
筋原性疾患では、低振幅で持続時間の短い波形がみられる。
最大収縮時では、多くの筋繊維が収縮するため干渉波がみられるが、神経原性の場合干渉波は減少するが、振幅の低下は生じない。筋原性の場合干渉波の減少は認められないが、振幅は減少する。


【神経伝導速度検査(誘発筋電図)】

〈検査の意義〉
神経障害部位の診断
障害内容・程度の判定
予後の予測

〈検査の方法〉
針電極を刺し又は表面電極を付着し、異なる部位の末梢神経や筋を電気刺激して、神経の活動電位やその時間差を記録し、運動神経伝導速度(MCV)や感覚神経伝導速度(SCV)を測定する。

〈検査結果〉
複合活動電位の正常値(「神経伝導検査と筋電図を学ぶ人のために」第2版医学書院より)
尺骨神経 運動線維49~54m/s 感覚線維44~54m/s
正中神経 運動線維38~51m/s 感覚線維47~53m/s
腓骨神経 運動線維40m/s

軸索変性疾患の場合、最大神経伝導速度の低下はあまり見られない(70%~80%に減少することは少ない)一方で、複合活動電位(CMAP)の振幅が低下する。また、感覚神経伝導速度は誘発不能になることが多い。
脱髄性疾患の場合、軸索は保たれるので神経の伝導は保たれるが、著しい神経伝導の遅延が生じる。

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