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交通事故の刑事裁判、民事裁判において、重要な証拠となる車両運行データが存在します。
そのデータを活かすことにより、事故態様に関する争いが一気に解決する可能性があることから、そのデータについて、またそのデータを活かす方法について、詳しくご紹介します。

交通事故の裁判において、重要な証拠となる車両運行データ、EDRとは

EDR(イベント・データ・レコーダー)は、交通事故態様解明のために極めて重要な証拠であり、徐々に刑事裁判や民事裁判でも証拠として提出されつつあるにもかかわらず、我々弁護士にさえまだあまり知られていません。

多くの車両に搭載されており、車両に一定の衝撃が加わったとき、速度や、アクセルの開度、ブレーキ操作の有無、ハンドルの切り角、加速度などを、その直前の5秒程度及び直後3秒程度記録し、保存されます。

もともとはエアバッグが正常に作動したかどうか、どういった条件で作動したかということを車両メーカーが記録化するためのデータで、そのデータを記録するEDRは、エアバッグがついている車にほとんど搭載されています。

速度や、アクセルの開度(どのくらい踏んでいたか)、ブレーキ操作の有無、ハンドルの切り角(どのくらい切っていたか)、加速度、エンジン回転数、ABS作動の有無、シートベルト着用の有無、どこから衝撃が加わって車両がどういう動き方をしたのか等の車両運行データを常時記録する装置がEDRであり、航空機の「ブラックボックス」のようなものです。
ありとあらゆる運行データが記録されます。

記録された運行データは常に上書きされていきますが、車両に一定の加速度(概ね1.5G程度とされています)が加わった場合、その直前の5秒程度及び直後3秒程度のデータにロックがかかり保存されることから、そのデータを抜き取り活かすことができれば、事故態様の解明に大きく貢献します。

EDRの説明では、エアバッグが展開しないとデータが記録されないという記載も見受けられますが、運行データ自体は常に記録されていることは留意する必要があります。

令和4年7月から販売される新車にEDRの搭載義務付け

もともと、エアバッグが適正作動したかを記録するために開発されたEDRは既にエアバックが搭載されているほとんどの車両に搭載されており、アメリカでは、平成20年(2008年)にEDRの統一規格が法規化されました。

同年に日本でも国土交通省により「J-EDRの技術要件」が規定されました。
ただ、あくまでもガイドラインに過ぎず、この時点では法規化されていませんでした。

しかし、令和3年中に国連WP29・183回会合において「事故情報記録装置に係る協定規則(第160号)」が採択されたことを受けて、日本においても、令和4年7月から販売される新車のうち、乗車定員10人未満の乗用車及び3.5t以下の貨物自動車にEDRの搭載が義務付けられました。

事故態様解明に大きく貢献するEDR

今回の法改正でEDRに記録されることが義務付けられたのは、WP29の160号規則に定められた最低限の項目、衝突前後の時間、記録回数です。
各メーカーによって異なりますが、既にEDRには常時膨大なデータが記録されています。
そのため、義務付け前から、いずれのメーカーの車両でも、J-EDRに規定されているような自車の衝突前後の速度やブレーキやハンドル操作、加速度など事故態様解明に極めて有益な基本となるデータは必ず記録されてきました。

交通事故賠償実務において、EDRデータが解明できること

EDRデータにより、交通事故賠償実務において過失割合の判断で頻繁に争いになる以下のようなことを解明できます。
・車両の速度、減速の有無、一時停止をしたかどうか
・接触事故でいずれが停止していたか、もしくは進路変更をしたか
・玉突き事故などでの追突の順序など
・ハンドルの切れ角やアクセルの開度等からいずれがセンターラインオーバーをしたか

このように、被害者死亡・重体事故などで加害者証言しか証拠がない場合などの事故態様の解明に極めて役に立つのです。

その他、一旦はブレーキをかけ減速したもののその後急加速している場合などでは、赤信号無視の事実を認定できる場合もあるでしょうし、ハンドルやアクセル操作が不自然であることから居眠り運転や飲酒運転なども証明できる可能性があります。

裁判例でも、保険金請求者の証言内容と、EDRに記録された助手席の乗員の体重が一致しないという理由で、保険金詐欺を認めたケースももあります。

ドライブレコーダーのデータも防犯カメラ映像もない場合の客観証拠

近年の交通事故賠償実務では、ドライブレコーダーや防犯カメラ映像の普及により、これらの客観証拠による事故態様の解明が急速に進んでいますが、いずれの関係車両にもドライブレコーダーが搭載されておらず、防犯カメラ映像もない場合には、事故車両内に記録されたEDRデータを利用することにより客観的に事故態様の解明が可能になります。

もともと、交通事故賠償実務における事故の態様というのは、今まではアナログで証明されてきました。
車両の損傷の程度によって、物理の計算式を使って速度や衝突の数値化を行ったり、それぞれの当事者の証言でどちらが信用できるのか
といったことから判断されていました。

最近ではドライブレコーダーが普及し、防犯カメラも、店舗の前やコンビの駐車場、マンションの入り口など町中に設置されています。
防犯カメラは、主要な交差点に警察がつけたものや、市町村が繁華街に取り付けたものもあり、そういった、ありとあらゆる場所の防犯カメラの映像やドライブレコーダーの映像によって、事故態様を解明するという客観的な手法がとられるようになりました。

それでも、例えば後方や斜め後ろからの衝突、横からの衝突は、前方だけのドライブレコーダーには映りませんし、防犯カメラがなかった場合には、昔ながらのアナログの手法によって事故態様を解明せざるを得ないという状況には変わりはありません。

そういった、防犯カメラにもドライブレコーダーにも映っていない、またはドライブレコーダーに映ってはいてもはっきりとは分からないという時、EDRデータを活用できれば、事故態様についての争いは一気に解決する可能性があり、まさに、EDRデータは事故態様解明の救世主と言えます。

また、EDRは、ドライブレコーダーのように、記録を任意にON/OFFをすることができず、自動的に常時車内ECUに記録されるので、事故後自らドライブレコーダーの映像を消去して「ドライブレコーダーの電源は入れていなかった」とか「SDカードを入れるのを忘れていた」などの言い逃れをすることもできません。

さらに、ドライブレコーダーや防犯カメラの映像と付け合わせることにより、より精緻な事故態様が再現できる可能性も秘めています。

日弁連交通事故相談センター愛知県支部には、弁護士丹羽が中心となって進めているEDR研究チームがあり、そこで令和2年4月に実施した愛知県弁護士会会員向けのアンケートにおいては、90%以上の会員が弁護士会員が「EDRデータは事故態様の解明に役立つと思う」と回答しています(愛知県弁護士会会報「SOPHIA」2020.4,No.710,p40~)。

現在EDRデータは、令和元年4月に発生した東池袋暴走死傷事故をはじめとして、自動車運転過失、危険運転致死傷罪等の刑事事件での検察官請求証拠として、広く活用されています。
また、民事事件でも、保険金詐欺事件・重大被害事故などで損保会社により利用される機会が増えつつあります。

→参考:近時のEDRデータを証拠とした民事裁判例の紹介

EDRデータが利用されてこなかった理由

以上のように、EDRはすでにほとんどの車両に搭載され、これほどまでに事故態様の解明に有用であり、そのデータは裁判の重要な証拠になるにもかかわらず、なぜこれまで利用されてこなかったのでしょうか。

それは、車両メーカーがEDRデータの開示を拒んできたからです。
そもそもEDRデータというものは、エアバッグが正常に作動したかどうかということをメーカーが確認するための、あくまでメーカー側が使うデータにしか過ぎず、一般の方に提供するということを想定していないために、一般の方がEDRデータを抽出することができないものとなっています。

EDRデータはエアバッグシステム用の電子制御ユニット(ECU)内に記録されるのですが、車両メーカーはそれぞれ独自にECUを開発し、専用の解析ツールを使ってEDRデータを抽出し利用しています。
各メーカーは、自社データの流出を恐れ、開示のためのコストの問題などを理由として、そのデータをユーザーに提供することはしません。
仮に生データが提供されたとしても一般の方がそれを読み取り・分析することはできません。

車両メーカーに対してEDRデータの提供を依頼しても応じてもらえない

これまで、例えば我々弁護士がメーカーにEDRデータの提出を依頼したとしても絶対に応じてはもらえませんでした。
捜査機関が捜査令状を取って依頼したことでレポート化されたデータが提出された、という話を聞いたことはありますが、今現在においても、一般の方がメーカーにEDRデータを要求しても、応じてはもらえないのです。

EDRデータを利用する唯一の方法

そもそもEDRデータが記録されるECU自体も、車両販売価格に含まれており、車両運行データという個人の行動に関するデータですので、本来EDRデータは、運転者または車両所有者に利用権限があると考えられます。

そして、このような利用権限をもとに、各車両メーカーは、ユーザーの求めにしたがい、EDRデータを誰でもわかりやすい形で提供してくれることが本来あるべき姿ではないでしょうか。
しかし、上述のとおり、車両メーカーはEDRデータの提供を頑なに拒んでいます。

そのような現状においては、一般の方が車両からEDRデータを抽出し、証拠として利用できるようなレポートを出力するには、「クラッシュ・データ・リトリーバル(CDR)」というツールを利用する他ありません。

CDRとはドイツの車両部品メーカーであるBOSCH社が開発した、EDRデータを抜き取るための専用の機械です。
この機械を利用すれば、EDRデータを抜き取り、それをレポート化することが可能になります。

アメリカでは、2008年(平成20年)のEDRデータの法制化の際に併せて、読み取りツールの市販化も義務付けられました。
それに対応してCDRが開発され、現在ではEDRデータの標準化ツールとして広く利用されています。

日本でも平成30年に、BOSCH社と科警研、車両メーカーであるトヨタ自動車が協力し、日本版CDRの開発と運用が開始されました。
現在、CDR以外に汎用性のあるEDRデータ読み取りツールは開発されていません。
捜査機関も、以前は車両メーカーにEDRデータの提供と解析依頼を求めていたようですが、現在はCDRを利用してEDRデータの抽出と証拠化を進めています。


交通事故態様を解明できるEDRデータを抜き取る機械、BOSCHのCDR

BOSCH社が開発したクラッシュ・データ・リトリーバル(CDR900)

CDRを利用して車両運行データ(EDR)を入手するには

CDRによるEDRデータ抽出の手順

BOSCH社では、専門知識や技術を習得し、資格試験に合格した者をCDRアナリストとする制度を設け、アナリスト資格者だけにCDRを販売しています。

ほぼすべての車には故障診断装置であるOBDポートというものが搭載されており、そこにCDRのコネクターを差し込んでEDRデータを抽出します。
OBDポートは、すべての車、世界共通の仕様ですのでCDRに付属のコードで全車種に対応できます。

このように、実はCDRさえあれば、OBDポートにCDRのコネクターを差し込むだけでEDRデータの抽出やデータ出力は可能です。
また、破損や損傷、電源喪失等でOBDポートが機能していなければ、エアバッグシステム用の電子制御ユニット(ECU)に直接アクセスしてデータを抽出することも可能であり、データ抽出と出力自体はそれほど難しいことではありません。

一般の方がEDRデータを利用するには、資格者に依頼するのが基本的な方法

EDRデータの抽出自体は難しいことではないのですが、それでもアナリスト資格制度を設けている理由は、EDRデータが交通事故の状況を明らかにし、刑事・民事裁判で極めて重要な証拠になる一方で、そのデータ分析には高度な専門知識が必須となるため、EDRデータを適正に取り扱い、CDRを利用することで得られるEDRデータレポートが信用に足るものであることを担保し、CDR利用の濫用を防ぐためとされています。
その理由や目的は全く正しいと思います。

ただ、CDRアナリスト資格を取得するには、自動車工学に関する知識や語学力が必要とされます。
また、5日間に渡るトレーニング期間や50万円程度の受講費用がかかり、アナリスト資格を取得した後も100万円程度のCDR機材の購入費やその他数十万円のソフトのライセンス費用や更新費用がかかりますので、誰もが簡単に取得できるものではありません。

そのため、現時点(令和4年2月時点)で日本国内のCDRアナリストは289名に過ぎません。
しかもその半数は捜査機関に所属している方です。
各都道府県警にCDRアナリストが在籍し、捜査の必要上、その車両のEDRデータを抜き取る必要がある場合に、その捜査機関のアナリストが抜き取ります。

そして4分の1程度が損害保険会社社員で、残りが自動車修理会社や自動車ディーラーの方、ジャーナリストなどであり、ここ愛知県においても、一般の方のEDRデータの抽出に協力していただけると考えられる自動車修理会社所属の方は5名しかいません。

一般の方がEDRデータを利用するには、そういった方々にコンタクトをとり依頼する、というのが基本的な方法となります。


損保会社では、令和4年4月から、あいおいニッセイ同和自動車研究所の埼玉センターにおいて、毎月1回、後述するCDRテクニシャン認定トレーニングが実施されています。

損保会社としては利益に大きく関わるような保険金詐欺事件が問題になる場合にはその損保会社のアナリストがEDRデータを抜き取ります。
コスト面からCDRアナリスト資格の取得やCDRツールの所有に限りがあり、コストを度外視した保険金詐欺事案(モラルリスク事案)や重大被害事件に限って運用されているのが実情ですが、このようにしてEDRデータの利用が飛躍的に高まっていくと考えられます(詳しくはこちら)。

つまり現状では、EDRデータは、捜査機関や保険金の支払いをする損保会社の手に握られていると言っても過言ではなく、一般の方が自らの車両に記録された自己の車両運行データを利用でするには程遠い状況です。

また、弁護士としても、刑事弁護人として捜査機関から請求されたCDRレポートの内容の適否を争うことは難しく、民事の代理人としても相手方損保会社側から提示されたCDRレポートの適否を争うことは困難を極めます。
つまり、構造的に、組織力と資金力を有した当事者に証拠が偏在している状況にあります。

EDRデータへの関心や知識の取得は必須

EDRデータの客観性や裁判官の心証に与えるインパクトの大きさからすれば、現在の状況は弁護人や被害者側代理人弁護士としても、まさに死活問題であり、今後、我々弁護士がEDRデータへの関心や知識を高めていかなければ、証拠の偏在化は益々進んでいくことになると考えられます。

裁判官の心証
裁判官が証拠の証明力(証拠価値)を判断して抱いた確信

令和3年11月CDRテクニシャン資格新設により、
EDRデータ利用への門戸、広がる

アメリカでは、CDRアナリストが8000名ほど存在し、1000から2000程度の拠点があり、交通事故直後に事故現場に駆け付け、それこそ「救急車よりも早く」EDRデータを抽出し保存することが一般的になっているようです。

それを受け、CDR開発のBOSCH社は、日本国内でCDRアナリスト資格取得のハードルの高さがCDRの普及を阻んでいる可能性を認識し、アメリカのようにCDRによるEDRデータの抽出が日常的になるよう、令和3年11月から「CDRテクニシャン資格」を新設しました。

アナリスト資格に比べて、テクニシャン資格取得のためにはBOSCH社でのトレーニング期間は2日間と短縮され、トレーニング費用も10万円程度に大きく減額されました。
テクニシャン資格者も、アナリストと同様にCDRを購入でき、EDRデータの抽出ができます。
ただし、車両運行データのレポート化やデータの解析はできないという制限があります。
つまり、EDRデータを抜き取るだけの資格ということになり、アナリスト資格者に事故データの表示や事故態様の解析を依頼するかたちになります。

しかし、何より、EDRデータは事故後失われてしまう可能性が大きいため、証拠保全のためにまずはデータを抽出できる環境が整備されることが、EDRデータの普及のための大きな一歩といえます。
このテクニシャン制度が、EDR利用を飛躍的に高めていくと確信しています。

BOSCH社では、今後、テクニシャン資格者を1000名程度に拡大することを計画しています(詳しくはこちら)。

CDRアナリストもテクニシャンも、使う機械は同じですが、抽出したデータを、レポート化できる内容は全く違います。

実際にどういったデータを抽出できるのか、アナリストとテクニシャンではどういったレポートデータの違いがあるのかということを動画でご説明していますので、ご覧ください。
パソコンの画面でお見せしながらご説明しています。


 

交通事故被害者がEDRデータを利用するために

CDRアナリストやテクニシャンに連絡

以上のような現状の中で、交通事故被害者の方がEDRデータを取得するためには、まず何より、最寄りのCDRアナリストやテクニシャンに連絡し、すぐにCDRを使ってEDRデータを抽出し、データを出力してもらうことであり、それが最も確実な方法です。

BOSCH社で公開しているCDR認定アナリスト名簿を閲覧する方法と、ご自身の契約している損保会社に相談し、CDRアナリストを派遣してもらう方法があります。

このように交通事故被害者の方がEDRデータを取得することが非常に困難な状況を打開すべく、弁護士丹羽は、弁護士として初めてCDRテクニシャン資格を取得しました(令和4年3月)。
被害者側弁護士として、早急に、CDRを使ってEDRデータを抽出することが可能になりました。
→弁護士丹羽のCDRテクニシャン資格取得について


交通事故態様の解明になるEDRデータを抜き取る資格「CDRテクニシャン」の証書

弁護士丹羽のCDRテクニシャン証書

相手方車両のEDRデータ抽出について

一方、相手方車両のEDRデータについては、相手方の同意がない限り勝手に抽出することはできません。
相手方の同意があれば、上記のようにCDRアナリストやテクニシャンに連絡し、相手方車両のEDRデータを抽出・出力してもらうことは可能です。

また、重大な交通事故で捜査機関がEDRデータを押収している場合もあります。
その場合は、刑事記録の開示手続を通じてCDRレポートを入手できるかもしれませんので、捜査機関にEDRデータを押収したか確認が必要です。
そして、もし取得していないとのことでしたら、押収するよう申入書を提出してもいいかもしれません。

さらに、相手方損保会社に、CDRによる相手方車両のEDRデータの抽出・出力を依頼する方法もあります。

その他、これまでに実施された例があるかはわかりませんが、CDRアナリストやテクニシャンの手配ができれば、理論的には裁判所の証拠保全手続を利用し、裁判所を介して相手方車両のEDRデータの保全ができると考えられます。
このようにして、今後証拠保全手続を利用したEDRデータの保全は進んでいくと思われます。

自車のEDRデータ保全

CDRアナリストやテクニシャンとコンタクトがとれない場合は、少なくとも自車のデータの保全はしておくべきです。

EDRデータはエアバッグシステムのECUに記録されていますので、エアバッグが展開した場合にエアバッグごとECUが取り換えられてしまうことがあります。
それを避けるために、まず、修理工場に連絡し、話をして、取り外したECUを廃棄せず、提供してもらうことが必要です。
エアバッグが展開しなかった場合に、ECUだけ取り換えが可能か相談してみてもいいと思います。

ただし、これらのケースの場合、電源の供給を喪失したECU内のEDRデータが保全されるかは、メーカーやディーラー修理工場などと良く相談することが必要です。

最終手段として、CDRアナリストやテクニシャンが見つかり依頼できるまで、当該事故車両に全く乗らないという方法もあります。
(交通事故の衝撃が一定の衝撃度を満たしておらず、事故記録としてデータがロックされていない場合は、時間の経過によりデータが上書きされてしまいますので、全く乗らないことによりそのリスクを回避する方法です)

交通事故被害者が、EDRデータを交通事故賠償で活用していくために

以上のとおり、現状では、交通事故被害者が容易にEDRデータを交通事故賠償の証拠として利用できる状況では決してありません。
EDRデータを多くの方が利用できるようになるには、今回のEDR設置義務付けを機会として、EDRの存在を皆様に知っていただくことが最も大切なことです。
何より、直接交通事故賠償に関わる弁護士にとっては、少なくともEDRデータについての知識を押さえておくことは急務です。

また、自動車メーカーがEDRデータの提供やレポートの開示に関して、自主的どころか極めて消極的な現状では、BOSCH社のCDRを利用することが最も確実で簡易な方法と言えます。
他社でその他の汎用性のあるツールが開発されていない現段階において、今後しばらくはその方向性に変わりはないと思います。
そのため、BOSCH社により新設されたテクニシャン資格を取得する方々が激増し、CDRが広く普及する環境が整えられていくことが肝要と考えます。


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