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あいおいニッセイ同和損保岐阜自動車サービスセンターによる同乗者に対する不当な過失割合の主張について

あいおいニッセイ同和損保岐阜自動車サービスセンターで、単なる同乗者にもかかわらず、運転者と同じ過失割合を主張されたケースがございました。
類似の事案で同様の主張がなされ、何もわからないまま示談することがないように注意喚起いたします。


事案の説明


 11歳のお孫さんである被害者をシートベルトを締め同乗させ、祖母が運転し交差点優先道路を直進進行していた普通自動車に、交差劣後道路から交差点を直進してきた加害車両が衝突したとの事故態様で、被害者のお孫さんが傷害を受け6か月程度通院加療を要しましたが、幸いにして後遺障害が残存しなかった事案になります。
 なお、運転者の祖母とお孫さんとは同居しておらず、お孫さんは両親と同居しその扶養の下にあります。

 お孫さんの傷害部分の損害につき、当初ご両親が、相手方保険会社であるあいおい損保岐阜サービスセンター担当者と交渉をしていましたが、担当者は冒頭示した「損害賠償額の内容」のとおり、「本件事故の過失割合については(お孫さん)が搭乗されていた(運転者)様の車両20%で示談済みでございます。」との理由で、単なる同乗者であるにもかかわらずお孫さんの損害についても20%の過失減額を主張してきました。

 なお、そもそも祖母が走行していた道路は優先道路ですので、一般的な過失割合は優先道路走行車両10%であり、運転者である祖母の過失を加重する特段の事情がないにもかかわらず20%を主張して物損を解決した担当者のやり方にも問題がありますので、祖母の人身損害の請求の際には、改めて適正な過失割合を主張することになります。


本件の問題点


多くの通常の交通事故の場合、過失割合は相互の運転手の運転態様に基づき定められ、単なる同乗者は交通事故の原因に影響を与えるような言動を行いませんので、事故態様についての過失減額をされることはありません。
本件でも、お孫さんは今回の事故の原因に何の影響も与えていないのですから、過失減額されることはありません。

そこで、受任後改めて損害を算定しなおし請求したところなおも担当者は同じ理由で過失減額を主張してきましたので、お孫さんは本件の事故原因に何ら寄与していないにもかかわらず、なおも過失減額を主張する具体的事実を適示するよう求めたところ、担当者は、ようやく過失減額をしてはならない事案だと気づき、過失減額の主張を撤回してきました。

本件で、私が指摘するまで、担当者は一貫して過失減額を主張していましたので、担当者自身過失減額を主張してはならない事案であったことに気付いていなかったと考えられます。
ただ、一般の交通事故被害者の方々は、本件のような事案で保険会社担当者に過失減額すると言われれば、信用して示談してしまうかもしれません。
やはり、遅くても示談前に専門家に示談内容を確認してもらうことは必須であると思わされた事案でした。

なお、同乗者にも過失減額がされるケースはございますので、下で詳しく説明します。


同乗者に過失割合的に減額がされる場合


本件とは異なり、同乗者が事故の原因の作出に関与したと言える場合、例えば、同乗者が速度超過を煽ったり、飲酒運転を承知したり助長したとの事情があれば、同乗者も事故の要因を作出したとのことで、減額がされることもあります(好意同乗の危険招致・関与・増幅型)。

また、被害者の行為が損害の拡大に寄与したと考えられる場合、例えば、同乗者がバイクでヘルメットを被らず、乗用車でシートベルトを着用しておらず、そのことで傷害を負ったり被害が大きくなった場合など、減額がされることは良くあります。

さらに、判例法理では、親子・夫婦間など「被害者本人と身分上、生活関係上、一体をなすとみなされるような関係にある者」の過失は、「被害者側の過失」として、考慮されることがあります(最高裁昭和51年3月25日判決、内縁関係について認めた最高裁平成19年4月24日判決)。
これは求償の循環を避ける趣旨で認められた法理になりますが、本件では、祖母と孫は別居していましたし、祖母が孫を扶養していたとの事実は認められませんので、「身分上・生活関係上一体をなす」とは到底いえませんので、やはり過失相殺すべき事案では全くありません。


旧富士火災海上保険は、平成30年1月、外資系保険会社であるAIU損保に吸収されAIG損害保険会社となりましたが、私は、旧富士火災は、共栄火災や日新火災などのその他の中堅損保会社と異なり、比較的被害者に寄り添った良い対応をしてくれる損保会社と認識しており、実は被害者側専門弁護士として最も評価していた損保会社でした。

ところが、AIG損保に代わってからというもの、そもそも電話が繋がらない、折り返しも中々もらえない、担当者にお願いしたことも何度も催促しないとしてくれないなど、保険金支払い以前の問題として、おかしな対応になってしまったと感じています。

以前から、損保会社をめぐる国内環境は厳しくなっており、AIG損保内部でも吸収合併を機に、相当な「合理化」が進んでいると推測され、被害者側にとって「良い損保会社」がまた一つ消えてしまったことを非常に残念に思っていますが、旧富士火災の担当者の方々には、大変な中とは存じますが、旧富士火災のころを思い出し被害者のために頑張って!と敢えてエールを送ります。


自賠責調査事務所が取り付けた医療機関からの回答書類が開示されるようになりました。

交通事故による後遺障害等級認定を行うのは、損害保険料率算出機構自賠責損害調査センターの各自賠責損害調査事務所ですが、調査事務所は、損害調査のため被害者の同意書を得て、各診療機関から様々な回答書類を取り寄せます。
例えば、むち打ち損傷後の頚・腰部由来の症状については、「症状の推移について」、「神経学的所見の推移について」と題する書面を取り付けます。
そして、例えば、これら回答書に、初診時に「症状無」、初診時から終診時までの推移が「軽減」、神経学的検査で「異常所見なし」などと記載されると、後遺障害等級該当性が否定されるなど、これら回答書は後遺障害等級認定に大変重要な資料となるものです(「軽減」と記載された場合に後遺障害該当性を否定する理由とすることの問題点については、
こちらをご覧ください。

当事務所では、被害者請求の際、自賠責保険会社に対しこれらの回答書類の写しを送付してくれるようお願いしていましたが、従前は「病院の同意がないから出せない」と言われ拒否されてきました。
病院は被害者本人の同意に基づき、本人の病状について回答書類を作成しているにもかかわらず、「病院の同意がない」ことを理由として、これを拒む自賠責保険会社の姿勢は大きな問題であると考えてきました。
これらの回答書類の内容は認定結果にも引用されており、その内容を確認しないと後遺障害等級判断が適正かの判断ができないため、やむを得ず病院に診療記録の開示手続きをとり、時間と費用をかけこれら回答書を入手していました。

しかし、最近になって、三井住友海上火災保険株式会社の自賠責保険窓口である関西企業自動車損害サポート部第5保険金お支払センターでは、自ら病院の同意の有無を確認したうえで、回答書類の写しを送付していただけるようになりました。
被害者本人の同意に基づいて取得した回答書類なので、当然の扱いと言えば当然ですが、これまで「病院の同意がない」ことを理由に回答書類の写しの送付を拒否してきた自賠責保険が、取り扱いを改めたことは大変評価できることと存じます。
今後、すべての保険会社が同様の取扱いをしていただけることを強く望みます。

また、被害者請求をする際には、自賠責保険会社に「自賠責調査事務所が診療機関から取り寄せた回答書類の写しを送付いただきたい」旨お願いしておくと宜しいかと存じます。

平成30年5月15日追記

上記のとおり、三井住友海上のほか、あいおいニッセイ同和からも、調査事務所取付の回答書が開示されるようになりました。
しかし、東京海上日動火災では、依然「自賠責調査事務所(自調)に確認したが、自調で取り付けたものであるから開示できない。」とのことでした。

この違いですが、三井やあいおいの自賠窓口は大阪であり、大阪の自調の管轄になるのに対し、東京海上の窓口は名古屋ですので、名古屋の自調の管轄にあることから、これら対応に違いがあるものと思われます。
上記のとおり、本人の同意の下、本人の病状が記された書面であり、本人に開示されても何らの不都合性はないのですから、本来上記回答書は開示されるべきものです。
速やかに、全国の自賠責調査事務所で統一的に開示する取り扱いがなされることが求められます。



三井住友海上火災の不当な治療費の打切りについて


三井住友海上火災名古屋損害サポート部第三保険金お支払センター(以下「三井住友」といいます。)において、極めて不当な理由で治療費を打ち切ってきた事案がございましたので、報告します。
事案は、青色信号で横断歩道を渡っていた依頼者である歩行者に、普通乗用車が衝突し、意識喪失を伴う頭部挫創、右膝内側側副靭帯損傷等を負わせたとのもので、被害者は事故後4か月が経過した現在においても、右膝の強度の痛みや可動域制限を訴えているという事案です。


「医療照会の結果」に基づく打切り


被害者は、事故後撮影した右膝MRI画像で、内側側副靭帯損傷と診断され、週に2回ほどの頻度で通院しリハビリを行っていました。
ところが、相手方付保任意保険会社である三井住友担当者は、事故後3か月半が経過したころ、突如として、「医療調査の結果」を理由として事故後5か月に満たない時点での治療費の打切りを宣告しました。
そこで、私は、担当者に対し「医療照会の結果」を開示するよう求めました。


医療照会の結果には、冒頭の画像のとおり、被害者にMRI画像上右膝内側側副靭帯損傷があることを明示したうえで、主治医は、事故7か月間リハビリを実施し、その時点で一応の症状固定予定と記載されていました。
そこで、私は、三井住友担当者に対し、内側側副靭帯損傷との外傷性の画像所見があり症状は重篤である、主治医も少なくとも7か月間の通院を認めている。にもかかわらず、5か月に満たない時点での打切りは極めて異例であることを伝えたうえで、改めて「医療照会の結果からは、早期の打切りをすべき理由はない。どのような理由で打ち切りと判断したのか。」について確認しました。
すると、担当者は、以下の理由を挙げました。

①現在右膝のリハビリとしては温熱療法のみが実施されており、「対症療法」の状態であり、打撲・捻挫と変わらず、通常どおり3か月で打ち切る。5か月間治療を認めたのは、被害者が高齢であるからだ。
②通院頻度も少ない。

これに対して、私は、現在右膝の痛みのためリハビリが出来ない状態であり、今後リハビリが行われる予定であること、通院は週2回程度行っており、頻度も決して少なくない旨説明しましたが、打ち切りの判断には変わりはないとの結論でした。


三井住友の打切りの理由の不当性~「対症療法」だと打切り?


まず、三井住友は、被害者に本件事故により内側側副靭帯損傷が生じたことを認めたうえで、「現在対症療法しかなされておらず、打撲・捻挫と変わらない。」と主張しました。
しかし、症状の原因となる他覚的所見のある本件と、これらのない単なる打撲・捻挫とは全く事情が異なります。
にもかかわらず、これらを同一視した三井住友の判断は不当と言わざるを得ません。

また、三井住友は、「対症療法」しかなされていない点をもって、打ち切りの理由としています。
この「対症療法」との表現は、相手方保険会社から打ち切りの理由としてよく挙げられる最近流行りの表現です。

そもそも、「対症療法」とは「原因療法」の対義語であり、症状の改善を目指して生じた症状に対して行う治療を指しますが、交通事故外傷では、原因療法だけで対応可能な症状がどの程度あるといえるのでしょうか。
そもそもリハビリは対症療法ですし、痛み止めの処方やしびれ感に対しブロック注射を打つこともすべて対症療法です。
この三井住友の担当者のように、「対症療法であるから治療費を打ち切る」とのことになれば、交通事故外傷では直接の原因を取り除く手術以外の療法は、すべて打ち切りの対象となってしまい、交通事故賠償実務が崩壊することは間違いありません。

被害者は現在右膝の痛みが非常に強い状態であり、痛みが落ち着くのを待って右膝の可動能力を回復するための理学療法を行う予定でした。
そして、被害者の右膝には事故後一貫して温熱療法がなされ、痛み止めの内服薬や貼付薬の処方がなされていましたので、まさに「対症療法」が実施され、症状は徐々に改善をみせている状況にありました。

さらに、三井住友は、「治療日数が少ない」ことを理由として挙げています。
しかし、被害者は、事故後現在においても週2回の通院を継続しています。
これをもって「通院日数が少ない」とされてしまうのですから、三井住友の場合、週3回以上の通院をしないと打切りの対象とされてしまうことになります。

私の経験からも、今回意識喪失が生じたほどの重篤な事故態様で、右膝の靭帯を損傷したケースで、医師が治療の必要性を認め、他に特段の事情がないにもかかわらず、今回の三井住友海上名古屋損害サポート部第三保険金お支払いセンター担当者のように、5か月足らずで打切りを宣告してきたのは、異常です。
今回の件の顛末は、改めてご報告いたします。