傷病別後遺障害等級認定の基礎知識と対策
傷病別後遺障害等級認定の基礎知識と対策
むち打ち 後遺障害 12級認定を受けた実際のMRI画像
12級13号認定・画像所見の実例
【MRI画像が大きなポイントに】
損保料率機構により、むち打ち損傷で後遺障害等級12級13号の認定を受けるためには、「画像上の異常所見」を必要とする運用がなされています。
そして、その「画像上の異常所見」とは、「症状と整合する脊髄・神経根への明らかな圧排所見」であり、実際にはMRI画像で捉えられた椎間板の変性(ヘルニア)、椎骨の変性(骨棘形成)、脊柱管狭窄などによる、脊髄もしくは神経根の圧排所見であることがほとんどです。
なお、ここでいう「症状と整合する脊髄・神経根への明らかな圧排所見」については外傷性であるか(本件事故で生じたか)は問われていません。
そこで、実際に損保料率機構により、むち打ち損傷で12級13号の認定を受けた方のMRI画像を以下に挙げます。
もちろん、画像所見のみで等級認定の判断がなされている訳ではなく、受傷態様、症状の内容及び程度、症状経過、神経学的異常所見の有無等の総合的な判断により、認定がなされています。
しかし、MRI画像で捉えられた病変の内容や程度が、12級13号認定の大きなポイントになっていることは間違いありません。
外傷性のヘルニアといえるポイントについては、こちらのページをご覧ください。外傷性ヘルニアのポイント
そして、MRI画像上で、椎間板や椎骨の変性による脊髄・神経根圧排所見が得られており、その圧排部分に対応した神経学的異常所見が得られていれば、12級13号の認定の可能性は高まります。
外傷性頚椎椎間板ヘルニアと診断を受けた画像
普通乗用車に乗車中、横転して受傷
C5/6に椎間板の後方突出の比較的大きなヘルニアが認められます。
頚椎の変性や他の椎間板に比して、同部位に明らかなヘルニアが認められることなどから、主治医は、外傷性の椎間板ヘルニアと診断しました。
主治医が医学的な根拠をもって、外傷性のヘルニア(本件事故により生じたヘルニア)と診断した場合、12級13号の認定の可能性は高まります。
同上 横断画像
左側に突出した椎間板により、頚髄が圧迫されていることがわかります。
左前腕中指から拇指にかけての痛みや痺れ・感覚麻痺等が生じていれば、それらの症状は、この病変を原因としているとみることが可能です。
頚椎捻挫で12級13号の認定を受けた画像
この横断画像でわかりますが、C5/6、6/7の左優位の椎間板の膨隆により脊髄及び左神経根の圧排所見が得られています。
左前腕から第2乃至4指の痺れ等の症状を訴え、
左スパーリング・ジャクソンテスト陽性、
左握力低下・左腕徒手筋力テストいずれも4
上腕三頭筋腱反射低下
との神経学的異常所見が得られた結果、12級13号の認定を受けました。
上記C5/6の横断画像です。
左優位の椎間板の膨隆が認められ、脊髄と左神経根の圧排を認めます。
腰部打撲で新鮮なヘルニアと診断された画像
歩行中、乗用車と接触し転倒し受傷。
L4/5、5/S1椎間板の後方膨隆がみられます。
主治医は、L4/5のヘルニアにつき、水分含有量などから新鮮なヘルニア(外傷性)と判断しました。
同上 L4/5の横断画像
ほぼ正中のヘルニアの膨隆により、神経根を圧排している所見が得られています。
左下肢痛、左足底(S1神経根の支配領域)の痛覚・触覚の低下を訴え、
左腓腹筋の筋力低下、
アキレス腱反射の低下
ラセーグ、SLRテスト、50度
などの神経学的異常所見が得られ、12級13号の認定を受けました。
筋電図検査結果と新たな診断書を提出し、異議申立てで12級13号の認定を受けた事案
30代男性が自転車で停止中、後退した自動車から追突を受け転倒し、頚部挫傷と診断された事案です。
被害者には頚部痛、両上肢から両手特に右第1乃至3指の痛み・しびれ感の後遺障害が残存しました。
右のMRI画像上C5/6椎間板の突出による脊髄への圧排所見が認められます。
Jackson・Spurling右陽性
これに加え、筋電図検査により、症状の裏付けとなる右正中神経のMCVの潜時延長及び振幅の低下、F波の潜時延長、頻度低下及び速度低下が認められました。
上記筋電図検査の結果、及び、画像所見や筋電図検査結果が症状と矛盾しない旨を記載した新たな診断書を提出し、「新たな診断書上「MRI上はC5/6のherniaによる神経圧迫を認める」との所見が認められ、新たに提出された頚部MRI画像を含めて、提出の画像を検討した結果、椎間板膨隆による脊髄や神経根圧排所見が認められ、画像所見と一致する知覚障害も一貫して認められていることなどを踏まえれば、他覚的に神経系統の障害が証明されるものと捉えられる」として12級13号が認められました。
画像所見、神経学的検査及び筋電図検査結果により12級13号が認定された事案
40代男性・自動車を運転中4トントラックから追突を受け、頚椎捻挫と診断され、頚背部痛、両上肢特に左上腕撓側第1~3指にかけてのしびれ感の後遺障害を残存した事案です。
MRI画像上C4/5椎間版左後方への突出による脊髄圧排が認められます。
また、電気生理学的検査で、左上腕二頭筋、上腕三頭筋、小指外転筋のMUPs平均持続時間が延長しており、左C6乃至Th1二次ニューロン障害と診断されました。
また、深部腱反射が両上肢で全体的に低下しており、左上肢筋力の全般的な低下が認められました。
Jachkson・Spurling左陽性
主治医の先生に、「頚部・腰部挫傷の症状の推移について」及び「神経学的所見の推移について」の各自賠責用診断書を丁寧に記載いただいたうえ、被害者請求時に提出することにより、「提出の画像上、椎間板膨隆による左優位の脊髄圧迫所見が認められ、医療照会回答書上、神経学的にも両上肢の腱反射異常や左上肢の筋力低下等の所見が認められることから、他覚的に神経系統の障害が証明されるものと捉えられる」として12級13号の認定を受けました。
症状と画像所見及び神経学的所見の一致する旨の主治医の意見書の作成により、12級13号が認められた事案
40代男性 乗用車に乗車中、4トントラックから追突を受け、さらに前2台に追突した計4台が絡む玉突き事故により、頚椎捻挫と診断され、左頚部・左肩から上肢(親指にかけて)の痛み・しびれ感等の後遺障害が残存した事案です。
MRI画像上C5/6椎間板ヘルニア及び黄色靭帯の肥大化、椎間関節部の骨棘の形成による、前後方からの脊髄神経の圧迫が認められます。
神経学的検査結果は、左手関節伸展筋4、左C6領域の感覚低下、腕橈骨筋腱反射低下、Jachkson・Spurling左陽性で、症状と一致しました。
被害者請求時は14級9号の認定に留まりましたが、画像所見及び神経学的検査結果が症状を裏付けている旨の主治医の意見書を提出し、異議申立てを行った結果、「提出の頚部画像上、第5/6頚椎で左神経根の圧迫所見が認められ、神経学的にも左上肢の腱反射等の異常所見が認められること等から、他覚的に神経系統の障害が証明されるものと捉えられる」として12級13号が認定されました。
明らかな神経学的検査結果の異常が得られなくても、症状と明らかに一致する画像所見が重視され、異議申立てにより12級13号が認定された事案
60代男性 普通乗用車に乗車中ノーブレーキで追突を受けさらに前車に追突したとの玉突き事故により、頚椎捻挫等と診断され、頚部痛のほか、左優位の両上腕から前腕、母指・示指を中心とした両手指に痺れ感等の症状が残存した事案です。
当初の被害者請求では14級9号の認定に留まりましたが、異議申立てにより、神経学的検査については三角筋・上腕二頭筋・上腕三頭筋の筋力低下が認められたのみで、腱反射は正常とされていたものの、MRI画像上、C3/4正中、C4/5/6左方向への、C6/7正中方向への椎間板の突出により脊髄神経への明らかな圧迫が認められたことによって、その神経支配領域(神経高位)である上腕(C5)、前腕から母指・示指(C6)、その他手指(C7,8)の症状の原因所見であるとして、12級13号の認定に至りました。
なお、本件ではJackson/Spurlingテストいずれも陰性とされていますが、本件では両側性の症状であり、神経根症状ではなく脊髄症状であると考えられるので、むしろ神経根症状の有無を調べる両テストで陰性であることは、症状に適合する結果であると考えられます。
傷病別後遺障害等級認定の基礎知識と対策
被害者側
交通事故専門弁護士による
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