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通・退勤中や業務中の交通事故については、労災が使えることは周知の事実であり、当事務所では治療途中での治療費打切りの恐れが少ないことや特に休業した場合の補償内容の手厚さなどから、当初から労災を使うことをお勧めして参りました(詳しくはこちら)。

また、労災事案では、法律上健康保険が使えないため、相手方任意保険会社から治療費が打ち切られた後、健康保険での通院ができず、その時点で労災に切り替えると申請手続き上のタイムラグが生じるというリスクもあります。

ところが、近時愛知県西三河地区の複数の労働基準監督署で、相手方保険会社から治療費が打ち切られた場合、労災は使えないなどの誤った説明がなされる事案がみられました。

そもそも周知のとおり、相手方保険会社は、治療による症状の改善効果が見られ治療の必要性や相当性があるかにかかわらず、治療費の内払いを打ち切ってくることがあります。
相手方保険会社から治療費が打切られた場合は、健康保険や労災に切り替えて、治療効果が薄れ医師の先生が症状固定もしくは治癒と判断する時点まで通院を継続したうえで、打ち切り後の治療の必要性と相当性が争われることになります。
つまり、相手方保険会社が治療費の支払いを打ち切ったからといって必ずしも治療の必要性や相当性が失われたわけでは全くありません。

任意保険会社は契約者が支払った保険料を原資とした利益を追求する営利社団法人であり、かつ、保険金の支払いは本来的には相手方に対する賠償請求であり、損害発生の証明責任は被害者が負うという性質を持つ一方で、労災は強制的に徴収される労災保険料を原資とする公的な支えあいという社会保障という性質から、任意保険会社よりも手厚い保障されるがなされるべきです。

そのため、労災は自ら社会保障の観点から打切り後の治療費(療養費)を支払うべきかを独自に判断すべきことは当然のことです。
にもかかわらず、相手方保険会社から治療費が打切られたのであるから、労災も療養費を支払わないというのは、自ら公的機関の役割や社会的存在意義を放棄したと判断せざるを得ません。
なお、労働基準監督署やその上部組織の労働局が、労災申請を受け自ら調査し治療の必要性がないと判断したなら、療養費は支払われないことは当然のことであり、労災によればいつまでの療養費が支払われるというわけでは全くありません。

さらに、この西三河地区の労働基準監督署のある担当者は、本件は通勤災害であり労働保険料の値上がりがないにもかかわらず、保険料の値上がりがあるから労災を使うと会社は嫌がるなどと誤った説明をしたり、当事務所からの助言を受け、相談者様が弁護士の話と違うと説明をした際、「弁護士もよく知らない人もいるから」などと当事務所の正当な助言さえ誤っているかのような印象を相談者様に植え付けたとのことです。

交通事故賠償実務では、以前から警察が実況見分や調書作成などの業務が増えることを避けるため、被害届の提出の際に「あなたも減点される可能性がありますよ」などといい被害者に人身事故届を出させないようにするケースが問題となっていますが、同じく労災でも業務を減らすため、労災保険金の支出を減らすためなどを動機として、このような虚言を呈してでも労災申請をさせないという事態に陥っているのなら大問題です。

このような労働基準監督署の職員の誤った対応や問題のある対応がなされた場合、各都道府県の労働局や、その上部団体である厚生労働省労働基準局に問い合わせをされることをお勧めいたします。


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