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頚・腰椎捻挫等による、いわゆるむち打ち損傷後の頚・腰部痛や上・下肢症状の自賠責保険(損保料率機構)での後遺障害認定の場面で、第12級13号の後遺障害等級の認定を受けるためには、症状を裏付ける画像所見のほか神経学的所見が必要であり、神経学的所見として、従前より被験者の意思の影響を受けづらい(深部)腱反射テストが重視されていることは、当事務所のHPでもお伝えしてきましたとおりです(こちらこちらをご覧ください)。

しかし、弁護士丹羽の経験上、腱反射テストは、交通事故外傷の場面では、脊髄損傷、腕神経叢損傷など脊髄や末梢神経が物理的に損傷した場合に異常がみられ、いわゆるむち打ち損傷後の脊髄症や神経根症で異常がでることはさほど多くなく、損保料率機構での後遺障害認定においても、むしろ「腱反射テスト等の神経学的検査結果で異常は見られない」として第12級13号認定を否定する理由として使われてきたという印象です。

腱反射テストは、正常範囲から亢進(脳や脊髄などの上位運動ニューロン障害)もしくは低下(神経根や末梢神経障害などの下位運動ニューロン障害)しているかを調べる検査ですが、そもそも打腱器で被験者の腱を叩くことで調べる検査であり、適切な部位を適切な強さで叩けているかがとても重要です。
また、筋の緊張状態にも大きく影響しますので、リラックスした筋緊張がない適切な肢位で検査されているかも重要にもかかわらず、関節可動域測定法のような肢位の標準化はなされていません。
何より重要なのは、この検査は正常値から亢進もしくは低下しているかで判断しますが、腱反射は人によって強弱が異なり、年齢や精神状態にも左右されますので、「正常値」がどの程度か被験者によって異なります。
そのため、事故前の正常値が明らかでない限り、「亢進」もしくは「低下」しているとはいえないことです。
なお、検査結果の記載方法も文献によって異なり、±(「+」が正常)や5段階(「2」が正常)、上下矢印(「+」や「n」が正常)とされ、この点もわかりづらく主観的とされる理由の一つといえます。

以上より、腱反射テストは、検者の技能や測定方法、被験者の年齢や状態により大きく左右されますので、科学的に客観的な検査とは言い切れない面があると弁護士丹羽は考えています。

他方、神経伝導検査や筋電図検査などの電気生理学的検査は、神経や筋を刺激することで発生する活動電位を記録する検査方法であり、より客観的な神経学的検査方法であるといえます(電気生理学的検査についてはこちら)。

損保料率機構が、現在においても、むち打ち損傷後の後遺障害第12級13号の認定要件として、主治医に冒頭画像の「神経学的所見の推移について」の作成を求め、神経学的検査結果の異常を求めるのであれば、上記のとおり「主観的」ともいえる腱反射テストで「正常」とされていることを殊更重視して第12級13号の認定を否定するのではなく、同じく神経学的検査結果である、電気生理学的検査結果をより重視すべきではないかと弁護士丹羽は考えます。


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