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自動車保険ジャーナルのNo.2105号(2022.3.10)に、事故1年4か月後にサーフィン大会に出場していた(仙台地裁R3.6.30判決)、事故後1か月程度でフットサルを再開していた(名古屋地裁R3.7.21判決)ことをもって、それぞれ後遺障害12級に該当する後遺障害を否定した判決が掲載されています。
また、No.2107 号(2022.4.14)では、自賠責で3級が認定された四肢麻痺を生じた被害者につき、相手方損保サービスセンター設置の防犯カメラに、被害者が車いすを押して歩いたり、階段を昇降したりする姿が撮影されていることをもって、12級相当の認定に留まった事案(東京地裁R3.7.8判決)が掲載されています。

例えば、被害者側の右手の麻痺で右腕や右手がほとんど動かないとの主張に対し、相手方損保側から被害者がパチンコ店で右手でパチンコのハンドルを握っていて、難なくタバコに火をつけていたとか、庭で不自由なく掃除をしていた、足が不自由という主張なのに子供の運動会で全力疾走していたなどの証拠が提出されるケースなど、以前より重大な後遺障害の場合や症状が疑わしい場合では、興信所や損害調査会社などによる被害者の素行調査が行われ、その証拠が裁判で提出されることが多くみられます。

弁護士丹羽も、右肩腱板損傷後の肩部痛12級13号請求の訴訟で、訴訟の最終段階で相手方から提出された施術記録中に、事故3か月後に「ゴルフラウンド後痛みがひどくなった」との記載があったことにより、それまで優位に進めていた訴訟がひっくり返ったという苦い経験もありますが、診療記録や施術記録の記載で足元をすくわれるケースも良くみられます。
特に入院中の看護記録は、治療中のみならず患者の入院生活中の言動が看護師の主観的視点で赤裸々に記載されていますので、その記載内容が訴訟の結果を左右することもあります。

また、インターネットの普及に伴い良くみられるようになってきたのが、スポーツ大会に参加もしくは入賞した際に、大会主催者からHP上で発表された結果に実名が掲載されるケースです。
ゴルフの月例大会やマラソン大会の結果などで、ゴルフやマラソンをしていたことが明るみになることも良くみられます。

これに加え、最近ではSNS等で個人の方が実名で日常生活をWEB上で公開することが大変流行しています。
加害者側損保会社にとって、このようなWEB上で公開された被害者の私生活上の事柄は、損害賠償請求を排斥するための証拠の宝庫ですし、WEBで簡単に入手可能ですので、現在ではこれらの被害者のWEB上での公開情報の収集は初動調査の基本中の基本です。
SNS上ではご家族や友人関係もすぐに判明しますので、これらの方々のSNSもチェックの対象となりえます。

もちろん、交通事故被害に遭った場合に一切運動をしてはいけないとか、SNSをしないようにしましょうというつもりは毛頭ございません。
しかし、このような被害者の主張に反するような自己矛盾証拠の証拠価値は極めて高いですし、被害者側代理人弁護士としての立場としても、突然このような証拠が突き付けられた場合これに対する反論は当然厳しくなりますし、被害者との信頼関係を損なう事情ともなりかねません。

当たり前のことですが、虚偽主張は紛れもない保険金詐欺ですし、誠実な交通事故被害者を愚弄し、交通事故賠償実務を混乱に陥れる行為です。
交通事故で受傷した後のご自身やご家族・友人・知人のSNSは、相手方損保会社もチェックしているかもしれないということを認識していただいたうえで、事故後の生活を送っていただければと思います。


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