被害者側交通事故専門弁護士によるブログ
あなたのドライブレコーダーは大丈夫ですか?
全国自動車用品工業会(JAAMA)技術委員会様での提言
弁護士丹羽は、令和5年5月18日、共同代表を務める合同会社nitroの事業の一環として、全国自動車用品工業会技術委員会様の会合において、自動車用品の製造販売等を行う企業様向けに、交通事故実務上のドライブレコーダーの問題点について提言を行う機会をいただきました。
弁護士丹羽及び合同会社nitroは、交通事故現場からの視点から、耐衝撃性・耐火性・耐水性の高いドライブレコーダーや優しく確実なドライブレコーダーの開発製造を行っていただくよう意見を述べました。
耐衝撃・耐火・耐水性の高いドライブレコーダーの必要性
ドライブレコーダーは、刑事・民事を問わず、事故状況を視覚的に正確かつ客観的に再現する証拠として極めて高い証拠価値を有することはいうまでもありません。
しかし、交通事故実務の最前線に携わる立場として、せっかくドライブレコーダーが設置されていても、正面衝突など事故の衝撃が極めて大きい事故、車両が炎上したり水没した事故でドライブレコーダーが損壊し、事故データが利用できないという事態に多々直面します。
このような衝撃が極めて大きい事故や車両火災事故は、被害が甚大になり事故態様の解明が強く求められる事案であり、水没事故は損保会社にとって支払い免責事由となる故意かを巡って事故態様が激しく争われる事案です。
そして、圧倒的な物量を誇る損保会社に比して、極めて弱い立場の交通事故被害者やその遺族らにとって、ドライブレコーダーは損保会社と闘う唯一かつ強力な武器です。
弁護士丹羽は、ドライブレコーダーの開発・製造・販売を業とされている会員企業の皆様に対し、交通事故被害者側弁護士としての立場と経験から、被害者にとっての強力な武器が肝心な場で使えないという事態を避けるために、事故態様の解明が極めて重要になる甚大被害事故、車両火災・水没事故でも耐えうる頑強なドライブレコーダーの開発が求められていることをお伝えいたしました。
優しく安心なドライブレコーダーの必要性
交通事故賠償実務上、上記のような特定の事故態様でのドライブレコーダー側の事情のみならず、以下のようなユーザー側のわずかなミスにより事故データが使えないという事態が散見されます。
・カメラが別の方向に向いていて、事故の場面が映っていなかった。
・記録媒体であるSDカードが挿入されていなかった。
・SDカードの容量がいっぱいで事故データが記録されていなかった。
・SDカードが破損していてフォーマットされていなかった。
・シガーソケットからの電源を携帯電話の充電のために抜いていた。
・ドライブレコーダーの不具合の警告に気付かなかった。
・イベントデータとしてロックされない軽微な事故ですぐにデータを取り出さなかったため、データが上書きされてしまった。
・データ取り出しの際に誤ってデータを消去してしまった。
・データを保存していたSDカードを無くした。
ドライブレコーダーを装着しただけで安心し、その後は全く気にしていないという方も多いと思います。
しかし、ユーザーが適切に対応しないと肝心な場面で上記のようなミスにより、データが使えずドライブレコーダを装着した意味が全くなかったという事態が頻発しています。
特に事故直後は焦りや興奮状態に陥っているため、このようなミスを犯してしまいがちです。
さらに、最近のドライブレコーダーは付加機能が多く、操作も難しくなっています。
そこで、我々合同会社nitroではユーザーのドライブレコーダーの利用実態にかんがみ、より簡単な操作で確実に事故データが記録されかつ取り出せる、優しく安心なドライブレコーダーの必要性や、ユーザーへの正しい使い方や定期的なメンテナンスを呼びかける場を設ける必要性を併せてお伝えしました。
正しいドライブレコーダーの利用に向けて
ドライブレコーダーがいくら進化したとしても、上記のようなヒューマンエラーはどうしても防げません。
ドライブレコーダーの事故データの有無で、過失割合が大きく変わったり、賠償自体が受けられるかが変わることも多く、その額は数十万円から場合によっては数千万円の金額になることもあります。
少なくとも、当初から事故態様が明らかにできるため、事故態様の争いが裁判になり何年も続いたりすることを避け早期解決が可能になります。
そこで、ドライブレコーダーを付けただけで安心し、その後放っておくのではなく、ドライブレコーダーが本来の機能を十二分に発揮し、肝心な時に正しく事故データを利用できるように、定期的に以下の点を確認していただくことが重要です。
1 ドライブレコーダーの電源が入りきちんと作動しているか(不具合の警告がでていないか)。
2 SDカード等の記録媒体が正しく挿入されているか。
3 SDカード等の記録媒体の容量がいっぱいではないか。
4 SDカード等は破損していないか。
5 カメラは正しい位置を向いているか(特に車内清掃後は要注意です)。
6 取扱説明書を読んで、事故が起こった場合のデータの取り出し方を理解しておき、少なくとも1度は映像データを取り出して再生する作業を実施する。
7 事故が起きたらすぐに記録媒体を取り出して、無くさないよう大切に保管し、データを消さないように注意しながら、パソコンやスマートフォン、USBメモリなど複数の記録媒体にデータをコピーしておく。特に衝撃が小さい事故ではイベントデータとしてデータにロックがかからず上書きされてしまう場合があるので事故後すぐにデータを取り出しておくことが要注意です。
8 これらに加えて意外と盲点なのが、SDカード等の記録媒体の寿命です。
フロントガラス部で高温下に晒され、また、運転中は常に膨大な映像・音声データが記録されているという過酷な記録媒体の利用状況にかんがみて、2年に一度程度はSDカード等の記録媒体を新品に交換することも重要です。
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