被害者側交通事故専門弁護士によるブログ
平成29年半ばから、自賠責での後遺障害等級認定が厳しくなったようです
平成29年半ばから、自賠責調査事務所の等級認定が厳しくなったようです
平成28年9月時点で、当事務所にむち打ち損傷でご依頼いただいた方の損害保険料率算出機構での後遺障害等級認定率は、全153件中、12級13号もしくは相当認定が6件、初回被害者請求時14級9号認定が93件、異議申立てによる14級9号認定が28件でしたので、計127件・82%でした(詳しくは、 「むち打ち損傷における後遺障害認定の実態」 をご参照ください。
しかし、平成29年半ばころから、むち打ち損傷での後遺障害等級認定がかなり厳しくなった感があり、当事務所でもこれまででしたら等級認定に至っていた事案が、異議申し立てをしても非該当となることが大変多くなって参りました。
また、骨折や靭帯損傷などの器質的損傷が認められても、12級13号の認定に至らず14級9号止まりの案件や、軽微事故などでは、自賠責レベルでそもそも治療との相当因果関係が否定される案件も散見されています。
認定が厳しくなった原因は?
このように突然、損害保険料率算出機構の損害調査が厳しくなった理由として考えられるのは、平成29年4月にそれまで値上げが続いていた自賠責保険料が、平成20年以来9年ぶりに値下げされたことと無関係とは思えません。
そもそも自賠責保険料は、金融庁自賠責保険審査会の審議を経てたうえで、金融庁長官の承認を得て決定されますが、その具体的金額は、ごく簡単に言えば、見込まれる損害額を基に算定されます。
記憶にある方もおられると思いますが、自賠責保険料は平成23年に平均で12%、平成25年に平均で14%と立て続けに大きく値上がりしました。
自賠責保険は、ノーロス・ノープロフィットの原則(保険会社が損も利益も出ないようにする)で運用されているところ、このように直近で大きく値上げした分、これ以降、保険料収入が見込まれた損害額(保険金支払額)よりも上回ったため、平成29年に値下げすることになりました。
個人的な感覚で恐縮ですが、平成23年及び平成25年に自賠責保険が大きく値上げした際には、非常に14級9号の認定が取り易かった時期がありました。
あくまで私見に過ぎませんが、この時とは逆に、自賠責調査事務所が「これから保険料収入が少なくなるから、保険金の支払いも厳しくしていこう」との方針に変わったと考えることも十分可能だと思います。
ただ、本来自賠責保険の保険料率(保険料)は、損害率(支払う保険金額)に応じて定められるべきものですから、「保険料が減ったから支払う保険金を減らせ」というのは、本末転倒のあり得ない発想だと思います。
今後、交通事故被害者はどのように対応していけばいいのでしょうか。
現在の交通事故賠償実務では、損害保険料率算出機構での後遺障害等級認定制度は、被害者の早期かつ容易な損害回復手段として、非常に有益かつ実効的であり、その有益性については今後も変わらないことと思います。
ただ、上記認定制度の信頼性や公平性が損なわれる事態になれば、異議申立の結果が不服であるとして紛争処理機構に対する紛争処理申請を行ったり、示談交渉を経ずに訴訟に移行する案件が増大し、交通事故賠償実務の混乱を来しかねません。
現に当事務所でも、これまで以上に、自賠責調査事務所の認定結果を不服として紛争処理申請をしたり、訴訟を提起する案件が増えています。
では、交通事故被害者はどのように対応していけばいいのでしょうか。
当事務所からお伝えできることは、当事務所が考える後遺障害等級認定4要件をしっかり満たすこと、これに尽きると思います。
後遺障害等級認定の4要件とは以下のとおりですが、詳しくはむち打ち損傷12級・14級の認定ポイントをご覧ください。
1 事故態様の重篤性
2 通院実績(期間と頻度)
3 症状の一貫・連続性
4 症状の重篤・常時性
これまでは、これら4要件を多少満たしていない案件も、異議申立てをすれば等級認定に至っていたことがありましたが、現在では、4要件をすべてしっかり満たしていない案件でないと等級認定はかなり厳しいという印象です。
ただし、通院の必要もないのに通院実績を上げるため無駄に通院したり、症状の重篤性が必要だからと、痛くもないのに痛いといって通院して、保険会社に治療費や通院慰謝料を支払わせるのは、紛れもない保険金詐欺ですので、絶対にしないでください。
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