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本日、既に他の弁護士に委任をされている会社員の夫(50代後半)を交通事故で亡くした方のご相談があり、作成された損害の算定書を見せていただきましたところ、将来老齢基礎・厚生年金についての死亡逸失利益が請求されておりませんでした。

未だ老齢年金の支給を受けていなくても、既に老齢年金の受給権を満たしている方のみならず、ある程度の期間保険料の納付をしており、将来老齢年金の受給を受けること蓋然性が高い場合、死亡したことにより受けられなくなった老齢基礎・厚生年金分の逸失利益も認められます。
特に会社員をされていた方の将来年金の死亡逸失利益はそれなりの金額になりますし、死亡を契機に遺族厚生年金を受給されている方は、遺族厚生年金の受給分は損害額から控除されてしまいますので(最高裁第二小法廷平成16年12月20日判決)、貰えるべきものを請求せず引かれるものだけ引かれっぱなしになってしまうので、十分ご注意ください。


将来の年金額の算定方法


では、どのようにして将来支払われるはずであった年金額を算定するのでしょうか。

残念ながら、まだ年金を受給していない場合、年金事務所では将来のある時点での見込み年金額を算定してくれませんので、ご自身で見込み年金額を算定することになります。


算定のための資料は?


では、将来の年金額算定のための資料は何をどこから入手すればいいのでしょうか。

毎年誕生月に送付されてくるねんきん定期便で将来の見込み年金額が算定できるのであれば、これで算定しますが、年齢によって記載内容が異なりますので(ねんきん定期便の記載内容はこちら)、通常以下の方法で資料を取得します。

最寄りの年金事務所(どこの年金事務所でも取り扱ってもらえます)から、以下のうち保険料額と支払い期間がわかる「被保険者記録照会回答票(資格画面含む)」、「年金額歴史回答票」、「受給権者原簿記録回答票」等を取り寄せます。
これにすべての年金保険料を納めた期間の年金算定の基礎となる標準報酬・賞与月額が記載されています。
そして、死亡後も保険料納入期間までの見込み保険料を併せて、算定式にあてはめて計算することになります。
算定式は、以下の日本年金機構のHPに記載されています。

老齢基礎年金の算定方法 老齢厚生年金の算定方法


いつから年金を受給するとして算定するか


では、いつから年金が支給されるとして算定すればいいのでしょうか。

死亡時に就労していた方の賃収入等の死亡逸失利益については、労働能力喪失期間は労働可能年限である67歳もしくは平均余命の2分の1の年齢までの長い方として計算することになります。
そのため、原則として労働能力喪失期間中は厚生年金被保険者として就労しており、老齢厚生年金は支給されないと仮定して(支給停止期間)、労働能力喪失期間の終了年の翌年から年金を受給する考えます。
そして、その時点を始期とし死亡時の平均余命までを終期とした期間分の厚生年金受給額を算定することになります。

他方、老齢基礎年金だけの場合、65歳の時点で年金受給権を満たしているなら、65歳を始期とし、死亡時の平均余命までを終期として算定することになります。


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