保険会社
東京海上日動火災保険㈱の不相当な治療費打切り理由について
高速道路上での玉突き事故でいわゆるむち打ち損傷を負った被害者について、相手方任意損保会社である東京海上日動火災保険㈱名古屋損害サービス第一部自動車損害第二チームの担当者は事故後3か月半で治療費を打ち切ってきました。
その際担当者が伝えた内容や打ち切りとする理由が、弁護士丹羽にとっては不相当と思われましたので、以下お伝えします。
なお、症状固定とは、「治療による症状の改善傾向がみられなくなった時点」を指しますが、交通事故賠償上、治療費打切りについては非常に多くの問題が生じており、当ブログでも度々お伝えしておりますので、詳しくは以下の記事(記事は古い順に並んでいます)もご覧ください。
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1 担当者から伝えられた内容
担当者は、弁護士丹羽宛電話にて以下の内容を伝えました。
「主治医への医療照会で、他覚的所見がなく、今後新たな治療予定もないとのことで、症状固定の時期であることが確認できました。」
2 誤解を招く発言内容について
まず、担当者は「主治医の医療照会の結果・・・、症状固定の時期ということが確認できました。」と話しました。
そもそも、治療による症状の改善効果がみられなくなったかについては、一義的には主治医の先生の判断を尊重すべきと考えておりますので、主治医の先生が「症状固定時期である」、すなわち治療効果がみられないと判断していることを確認したのであれば、相手方保険会社も症状固定時期と判断することはやむを得ないと思われます。
そこで、弁護士丹羽は、担当者に主治医がはっきり症状固定時期と判断したのかと確認したところ、担当者は、
「主治医は症状固定とははっきりいっていない。」
と回答をしました。
担当者の発言内容をそのまま聞くと、医療照会の結果、医師も症状固定と判断したと聞こえますので、仮にその発言をうのみにした場合、医師が症状固定と判断しているので、治療は終えなければならないとの誤解を与えかねません。
今回、担当者から「医師は症状固定とはっきり言っていない」ことは確認できましたので、打切り後も治療を継続できることになりましたが、これが一般の方であれば、主治医も症状固定と判断したと誤解し、治療を終えかねない危険のある発言だと思います。
また、被害者の方がその発言を鵜呑みにし、主治医に対し「損保会社に症状固定と話したようだが」と伝え、主治医と被害者との間に無用な争いや相互に不信感を抱かせる恐れもあります。
現に、損保会社からの医療照会の結果がきちんと被害者の方に伝わっておらず、主治医と被害者の間でトラブルになるケースもみられます。
今回の担当者は、意図的に誤解をさせるような発言をしたのか、それとも無意識なのかわかりませんが、担当者が被害者の方本人に対しても、日常的にそのような誤解を招く発言を無意識にしているのであれば、直ちに是正すべきです。
被害者の治療を受ける機会を徒に奪わないために、相手方損保会社は、医療照会に基づく治療費の打ち切りを主張するのであれば、
自らの判断で治療の必要性なしとして治療費を打ち切るのか、それとも、
主治医もはっきりと症状固定と判断しているのか、
明確に区別して被害者側に伝えるべきだと弁護士丹羽は考えます。
3 治療費打切りの理由について
また今回担当者は、症状固定時期である理由として、①他覚的所見がないこと、②今後の治療方針に変更がないことの2つを挙げました。
まず、①の「他覚的所見がない」との点についてですが、他覚的所見とは何を指すか明確ではないものの、骨折や靭帯損傷の画像上の外傷所見がないことを指すとするなら、そもそもいわゆるむち打ち損傷は外傷所見がないことが一般的ですので、外傷所見などの他覚的所見がないことをもって症状固定の時期とするならば、むち打ち損傷の場合、事故当初から症状固定となってしまいます。
次に②の「今後の治療方針に変更がないこと」についてですが、リハビリ内容や処方された薬が効いていて症状が改善傾向にある場合であっても、敢えて治療方針を変更する医師はいるのでしょうか。
治療方針に変更がないことはむしろ治療による改善傾向があることを示すことに繋がり、このことをもって症状固定と判断する理由にはなりえないのではないかと弁護士丹羽は考えます。
4 まとめ
確かに、任意損保会社は治療費の内払いは法的な義務ではないので、いつまで治療費の内払いを行うかは任意に決められます。
しかし、任意損保会社が敢えて「症状固定」としてその理由を述べるのであれば、症状固定の本来的意味である、治療による改善効果が失われたという点について、誰しもが納得できる理由を述べるべきですし、それが示談代行権限を得て加害者に代わり賠償を支払う損保会社の社会的・道義的責任であると考えています。
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被害者側
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