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人身事故被害を適正かつ公正に回復するためには、医師の先生や診療機関の協力が不可欠で、当事務所でも医師の先生方との関係性については専門家に対する深い敬意と細心の注意を払って対応しており、幸いにして最近では医師の先生方にも交通事故診療についての理解が深まり、適正に対応いただけることも多くなって参りました。

しかし、まだまだ交通事故診療への誤解により患者様への不適切な対応により、患者様が適正な賠償を受ける機会を喪失させかねないこともあり、本ブログでもこれまで以下のとおり度々注意喚起をして参りました。

後遺障害診断書の追記・修正に応じていただけないケース
治療費打切日を症状固定日とすること
高額すぎる画像発行費用
一方的な治療終了の宣告
カルテ等診療情報の開示拒否
不適切な病院の対応・2
不適切な病院の対応について

今回、名古屋市所在する整形外科クリニックの医師の先生から、後遺障害申請に際し不適切な助言をされたという被害者の方がおられ、まだまだ医師の先生方に交通事故診療へのご理解をいただけていないことを嘆くとともに、誤った助言により交通事故被害者の方々に後遺障害申請の機会を失わせないために改めて注意喚起いたします。

医師の発言内容

被害者の方50代で、自動車に乗車中、交差点交差道路から赤信号無視の自動車から衝突を受け、肋骨を骨折し腰部を捻挫したという事案で、上記クリニックに5か月程度通院後、相手方損保会社から事故後6か月での治療費打切りの連絡があったことを機に、残存している腰の痛みについての後遺障害申請について医師の先生に相談したところ、医師の先生から以下のような発言があったとのことです。

「半年まで通うケースは珍しい。」

「下手に後遺障害申請をして、加齢のものと判断されると、自費請求になった人もいるらしい。」

上記発言の問題点

まず、当事務所設立当初からお伝えしており、現在では当然の前提とされている感もございますが、自賠責での後遺障害認定実務上、頚・腰椎捻挫・打撲等のむち打ち損傷後の残存症状で、自賠法第14級9号の「局部の神経症状」の後遺障害認定を受けるためには、「通院頻度」の要件を充足するため、最低限事故から6か月の通院期間が必要とされています。

そして、これまで当事務所で取り扱ってきた数多くのほぼすべてのむち打ち損傷後の症状で後遺障害申請をする際には、6か月以上の通院をされていますし、本件でも相手方保険会社も少なくとも6か月の通院は認め治療費の内払いに応じる姿勢を見せています。

これらのことからも、現在の交通事故賠償実務に照らせば、「半年通院するケースは珍しい」というのは間違いです。
弁護士丹羽もずいぶん昔に、「むち打ちは3か月ほおっておけば勝手に治る」と言い放ち、3か月間の治療期間しか認めなかった医師の先生の事案を取り扱ったことがありますが、今回の意思の先生が真にそのように理解しているのであれば、この整形外科クリニックに通うむち打ち損傷を負った被害者の方々は、早期に治療を終了させられていた恐れも考えられます。

次に、「後遺障害申請をして加齢のものと判断されると自費請求になる」という発言についてですが、その真意は不明ですが、おそらく素因減額や既往症減額の話や、受傷との因果関係の話(受傷否認)をされているのではないかと推測されます。
しかし、そもそも後遺障害認定の場面では、自賠責では素因減額や既往症減額の判断や受傷との相当因果関係の判断はしませんし、仮にその後の賠償交渉の際に、加齢性変化が症状の原因の要因となっているとされたとしても、その加齢性変化は「疾患」といえるほどの変性であることが必要になり、本件や類似事案で素因減額の主張がなされるとも思えません。

そして、万が一素因減額が問題視されたとしても、すでに支払われた治療費の一部が自費負担(他の損害費目から差し引かれる)となるだけで、「自費診療」になるということも通常は考えられません。

また、この医師の先生が念頭に置いていると思われる、受傷との相当因果関係が問題とされる事案であれば、当初から相手方保険会社は治療費の内払いには応じないのが通常ですし、今回のような明らかな受傷機転が認められる事案で、「加齢性変化だから(因果関係が否定されて)自費請求になる」ということも考えられません。

被害者側交通事故弁護士の立場から

この医師の先生は、これまで5か月間自由診療で相手方保険会社から治療費の支払いを受け続けていたにもかかわらず、いかなる事情からこのような発言をした真意は不明ですが、この発言を受けて、被害者の方は後遺障害申請をすることがおかしいのではと疑問を感じてしまいました。

当事務所でもこれまで「こんな症状では後遺障害は取れないよ」と医師の先生から言われたにもかかわらず、局部の神経症状で後遺障害認定を受けた方も何人もいらっしゃいます。

交通事故の被害者の方は、症状が残存しているにもかかわらず、主治医の先生からこのような発言をされてしまうと、後遺障害申請をためらったり無理だと思い込んでしまい、やむなく後遺障害認定を受けず示談し、しっかりとした後遺障害部分の賠償を受けられないまま後遺障害に苦しんでしまうという事態に陥ります。

当然のことながら、症状や治療については医師の先生の専門分野ですが、交通事故賠償実務における後遺障害認定については、主治医の先生の診断を基にした残存症状の金銭的評価という法的判断の場面になりますので、弁護士の専門分野になります。
後遺障害認定が受けられる可能性があるかについては、主治医の先生のご発言に惑わされることなく、弁護士に相談されることをお勧めいたします。


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