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弁護士丹羽は令和7年11月3日、愛知県弁護士会と韓国光州弁護士会との親善交流会での共同セミナーで、日本の交通事故賠償実務についての講演を行い、当事務所ブログにて、日本と韓国の交通事故賠償実務の違いについてご説明いたしましたが(ブログはこちら)、その後、韓国旅行中に事故に遭った方からの問い合わせが相次いでおります。
韓国への旅行がブームとなっている今、韓国旅行中に交通事故に遭った場合、どのように対応すべきかについて説明いたします。


1 日本に比して示談交渉での賠償額の提示はかなり低い


韓国でも任意保険の加入率は8割弱と日本と大差ないので、任意無保険の場合を除いて、任意保険会社や第三者である損害算定士による賠償額の提示があります。
ただ、その金額は日本で事故した場合に受けられる金額よりもかなり低いことが一般的ですので、韓国で民事裁判を起こして、裁判所で適正な金額の認定を受けることになります。


2 韓国弁護士への委任が必要


現地で治療費や帰国費用、親族の渡航・滞在費用等保険金の一部支払いの交渉をする必要もありますし、韓国で訴訟を提起するためには、日本の弁護士には韓国での訴訟代理権はありませんので、まず韓国の弁護士に委任することが必要になります。
その際は、日本語がある程度話せる弁護士に依頼した方が手続きはスムーズに進むと思いますので、ソウルの日本国大使館や在釜山総領事館もしくは在済州総領事館にご相談されれば宜しいかと存じます。
なお、韓国の弁護士に委任せず、本人訴訟で韓国で提訴するという手も考えられますが、手続きの専門性や複雑さ、裁判期日ごとの韓国裁判所への出頭という点から考えれば現実的ではありません。


3 韓国語に精通した日本の弁護士の役割


日本の基準に照らした賠償額が適正かの判断

先述のとおり、韓国で認められる賠償額については日本で認められる賠償額よりも低額になることが一般的ですが、そもそも、一般の方にとって賠償額が適正なのか判断は難しいと思います。
そこで、日本の弁護士により、日本の賠償制度に照らして、韓国での賠償提示額や認容額が適正なのかどうかを判断することが求められます。


適正な賠償請求を促す必要性


韓国の弁護士が日本の賠償実務に精通しているかはわかりませんので、認められるかは別としても本来賠償請求すべき損害をすべて請求するよう日本の交通事故賠償実務に通じた日本の弁護士が、韓国の弁護士に請求を促し、例えば日本語の診断書や領収書などの証拠をまとめ、日本の判例などを示すなど法的視点に基づいた算定資料や根拠資料を提供したうえで、韓国の弁護士に請求を促すことも必要になります。
なお、損害費目やその評価額について日本と韓国では差がありますし、韓国でも休業損害や逸失利益など収入を基準に判断する賠償については、本国(本件では日本)での収入を基準として判断することになります。


正確な賠償に対する理解と行き違いの防止


例え韓国の弁護士が日本語が上手だったとしても、法律や賠償に関する用語については専門知識に基づいた正確な翻訳が必要になりますし、お互いの行き違いを防ぐために、一般の方にも十分理解できるようかみ砕いで説明することも重要です。


日本での対応


日本に帰国した後、適正な賠償を受けるために必要な諸々のアドバイスは日本の弁護士の視点は必須になろうかと思います。
以上のとおり、適正な賠償を受けるために韓国の弁護士の活動をサポートし、依頼者様に正確な知識をもたらし、韓国の弁護士との間で正確かつ円滑な橋渡しをするという観点から、韓国の弁護士が就いたとしても、日本の弁護士の役割や必要性は認められるといえます。

ただ、以上の役割を十分果たすためには、日本の弁護士といっても、韓国語に精通し、かつ、日本の賠償実務に長けた弁護士に依頼すべきことはとても重要です。


4 海外旅行保険の重要性


日本で車の保険に加入しており、人身傷害保険や弁護士費用特約に加入していたとしても、日本国内での交通事故にしか適用されませんので、韓国での事故では使えません。
海外旅行保険に加入していれば、韓国での交通事故に対応でき、相手方の保険会社から十分な支払いが受けられないとしても、補償内容にもよりますが、ご自身の海外旅行保険から治療費や後遺障害・死亡による補償、家族の渡航費用や物的損害についても支払われますし、弁護士費用特約に加入していれば上記の弁護士費用も支払われます。
クレジットカードに自動付帯されていることもありますので、まずはご自身の海外旅行保険の有無を確認することも重要です。

弁護士丹羽が実際に韓国を訪れた際も、街中でクラクションが鳴り響き、タクシーや大型バスなどの職業ドライバーも含め、相当の速度を出しかなり運転が荒い印象を持ちました。
韓国保険研究院が2023年4月10日に発表した報告書では、韓国の事故発生率は日本の2倍を上回るとのことです。

昨今日本から韓国への旅行がブームになっており、旅行中の日本人が韓国で事故に遭うケースも増えてきた印象です。
これまで述べてきましたとおり、韓国で交通事故に遭った場合、適正な賠償を受けるためには、日本での交通事故以上の高いハードルがありますので、万が一に備え、最低限海外旅行保険に加入しておく必要があろうかと考えます。


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