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 弁護士丹羽が、以前所属していた山口県弁護士会の法律相談センターからのご依頼により、平成28年7月15日、山口県弁護士会館において、同会所属の先生方を対象とした低髄液圧症候群(脳脊髄液減少症、漏出症も含みます)についての研修会の講師を行いました。
 研修会は、宇部・下関・岩国・周南・萩の各弁護士会支部にもTV会議システムにより中継され、山口県弁護士会全会員の3分の1にあたる50名もの多数の先生方にご出席いただきました。
 研修会では、低髄液圧症候群の病態・発症形態、症状内容・治療法、用語の整理などの基本的な事項を説明した後、各医学会等から提唱されている低髄液圧症候群の診断基準、特に平成23年厚労省研究班画像診断基準を詳しく解説しました。
 研修の後半では、低髄液圧症候群が正面から問題とされた平成27年及び平成28年に出された最新の判例の分析を行い、低髄液圧症候群にり患する患者様から法律相談を受けた際の留意点などをお話ししました。

 講演内容の目次は以下のとおりです。
 1 脳脊髄液とは、脳脊髄液減少症の病態・発症形態・主な症状内容・治療法
 2 用語の整理、現在までの流れ、腰椎穿刺(ルンバールとは)
 3 画像診断
  (1) RI脳槽シンチグラフィー (2) 頭部MRI画像 (3) 造影脊髄MRI/CT
 4 診断基準
  (1) 脳脊髄液減少症ガイドライン (2) 2010年日本脳神経外傷学会基準
  (3) 2011年厚労省研究班画像診断基準 (4) 国際頭痛分類第3版β版
 5 ブラッドパッチ保険適用の要件
 6 自賠責損保料率機構での認定の実態
 7 近時の判例分析
  (1) 最高裁第一小法廷平成27年10月29日決定
  (2) 以前の肯定裁判例
   ① 名古屋高裁平成23年3月18日判決
   ② 大阪高裁平成23年7月22日判決
   ③ さいたま地裁平成26年12月4日判決
  (3) 近時の裁判例
   ① 東京高裁平成26年8月21日判決
   ② 東京高裁平成27年2月26日判決
   ③ 福岡高裁平成27年5月13日判決
   ④ 名古屋地裁平成27年3月25日判決
   ⑤ 仙台高裁平成27年5月27日判決
   ⑥ 名古屋高裁平成27年8月27日判決
   ⑦ 大阪地裁平成27年11月11日判決
   ⑧ 札幌地裁平成28年3月25日判決
 8 相談・受任時の注意点

 その後の質疑応答では、低髄液圧症候群が正面から問題とされた最高裁第一小法廷平成27年10月29日決定の代理人の先生もご出席されていましたので、同先生から、訴訟を維持するうえでの留意点についてのご説明をいただき、大変勉強になりました。
 その後の懇親会では、ある重鎮の先生から、「この病気は自転車のパンクだと思えばわかりやすい。」との言をいただき、非常に感銘を受けました。
 まさに、本症例の問題点は、そもそもパンクしているのか、自然な漏れなのか、漏れているとしてどこから漏れているのか、漏れをふさぐにはどうしたらいいかにあり、人と自転車を同一視するわけでは決してありませんが、先のお言葉は本症例の問題点を一言で言い表すのに最もふさわしいと感じられました。
 山口県弁護士会及びその会員の皆様には、弁護士丹羽が平成19年に山口県萩市で弁護士としての第一歩を歩み出した際、非常に親身に優しく接していただき、時には厳しいお言葉をいただきながら、弁護士としての道を正しく歩む道標を示していただきました。
 今回の研修では、ご出席いただいた大半の先生方がその時にご指導いただき大変お世話になった先生ばかりで非常に緊張しましたが、微力ながらわずかばかりでもご恩返しができたなら、とても嬉しく思っております。
 研修の場を設けていただいた山口県弁護士会の皆様、ご参加いただいた先生方には、改めまして篤く御礼を申し上げます。


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