seminar


自賠責調査事務所では具体的な後遺障害認定の要件は明らかにされておらず、また認定理由が記載された書面も極めて形式的なものですので、どのような要件を満たしていれば、後遺障害認定を得られるのか全くわかりません。
特にむち打ち損傷後の後遺障害認定の実態については、我々のような専門家でもこれを正確に認識することは困難です。

そこで、当事務所で扱った実際のむち打ち損傷後の後遺障害残存例154件を詳細に分析して、自賠責調査事務所でのむち打ち損傷の後遺障害認定の実態を明らかにしたのがこの講演です。
むち打ち損傷の認定の実態を示した公刊物は現状見当たりませんし、現段階で本講演のような分析を行い公開した例は私の知る限り見当たらないのではないでしょうか。
この講演内容を土台にして、今後各方面からの研究や分析が進み、損害保険料率算出機構の後遺障害認定の実態がより解明されることを望みます。
本講演のレジュメはページ下で公開しています。


むち打ち損傷の認定要件


一般的認定要件


当事務所では、従前より一般的な後遺障害等級認定要件として以下の点を挙げている。
① 事故態様
② 通院実績
③ 症状の一貫・連続性
④ 症状の重篤・常時性


 詳しくはこちらのむち打ち損傷12級・14級の認定ポイント (頚部・腰部捻挫等)ページを参照してください。

上記要件に加え、下記の要件によりその認定結果が左右されることが明らかになった。


積極要件(より後遺障害認定可能性が高まる要件)


(ア) 画像所見
(イ) 上下肢症状
(ウ) 神経ブロック注射などの治療
(エ) 症状固定後の通院実績
(オ) 共同不法行為 


消極要件(後遺障害認定が困難となる要件)


((ア) JA共済連)←平成29年10月から、JA共済連も他の大多数の損保共済会社と同様に自賠責調査事務所で等級認定がなされるようになりました(詳しくはこちら)。
JA共済連は、その他の大多数の自賠責保険・共済と異なり、中立・公正とされる損害保険料率算出機構による後遺障害認定を行わず、自社で後遺障害認定を行う。
すなわち、保険(共済)金算定の前提となる後遺障害認定と保険金支払いを行う機関が同一であるため、いわゆるお手盛りとなる。
そのため、JA共済連ではむち打ち損傷に限らず、後遺障害認定は損保料率機構ので認定に比して非常に厳しく、当事務所ではJA共済連を自賠社とする事案で、むち打ちで後遺障害認定に至った事案は皆無である。
なお、当事務所では、JA共済連の場合、形だけ異議申立てを行い、その上で紛争処理機構による紛争処理申請を行っている。
(イ) 児童・若年者(10代まで)
若年者の場合、可塑性に富むことから、頚・腰部の症状が永続的に残存するとはみなされず、当事務所では、若年者のむち打ち損傷での後遺障害認定を受けた事案は皆無である。
(ウ) 既往症の存在
本件事故以外で直近で同一部位に受傷歴があるような場合には、認定が受けられない場合がある。
(エ) 診断書等に強調された症状の改善傾向の記載
経過診断書や症状推移表などで、症状が「軽減」、「改善」、「治ゆ」などの記載が過度に見られる場合、非該当とされる。
ただし、症状が改善傾向にない場合、治療の必要性がなく症状固定とされるのであり、治療中に症状の改善傾向がみられるのは当然のことであるから、このことをもって後遺障害非該当とする損保料率機構の等級認定実務には大きな矛盾があると思われる。
(オ) 受傷機転に対応しない広範かつ過剰な症状
受傷態様(事故態様)に比して、過剰な症状が生じている場合、身体の器質的損傷ではなく、心因的な要素の介入や故意の誇張がみられるとして、後遺障害該当性は否定される。

以下、本講演のレジュメをPDF化したものを掲載します。
12級認定例や非該当事案の具体例はレジュメ内に記載されています。

むち打ち損傷における後遺障害認定の実態 161012


シェアする