病院について
不適切な医師の対応について~労災事案で自賠書式の後遺障害診断書作成を拒否されたケース
当事務所が所在する名古屋市を含む中部地方では、自家用車や自転車で通勤する方も多く、通・退勤中に事故に遭う通勤災害としての交通事故も多く見られます。
業務中の事故はもちろんのこと、通・退勤中の交通事故が労災事故に該当し、相手方加害者が損害保険に加入していたとしても、労災が利用可能なことは今ではよく知られています。
そして、当事務所のブログでも、労災交通事故の場合、積極的に労災を利用していくべきことは何度もお伝えしています(詳しくはこちらをご覧ください)。
今回、岐阜県美濃地方で、自転車で通勤中に左折乗用車に巻き込まれ脊柱の椎体(圧迫)骨折を生じ、事故当初から労災を利用し、療養給付を受けながら通院された方が、通院していた同地方に所在する整形外科クリニックから、
「既に労災書式の後遺障害診断書を記載したから、自賠書式の後遺障害診断書は記載しない。」
として、自賠書式の後遺障害診断書の作成を拒否されました。
これまで当事務所で取り扱ったすべての労災交通事故事案では、問題なく労災及び自賠責用の後遺障害診断書をそれぞれ記載いただいており、この美濃地方の整形外科クリニックの対応は極めて異例で、今後自賠責での後遺障害認定に多大な支障を生じる恐れがあるため、注意喚起のためご紹介します。
そもそも、労災が社会保障上の制度であり、損害賠償(賠償保険)については民事賠償もしくは賠償保険上の制度として併存する異なる制度であり、かつ、保障の対象が異なることから(もちろん治療費や療養費等の重複支給部分については調整の対象なります。)、双方の制度を利用する場合、制度上定められた書式の診断書を各関係機関に提出する必要があります。
そして、民事賠償の点から後遺障害評価を受ける場合、自賠責様式の後遺障害診断書を提出し自賠責保険(損害保険料率算出機構自賠責損害調査事務所)での後遺障害認定手続を経ない限り、損害が確定せずその後の賠償上の示談交渉に進めないという交通事故被害者にとって大変大きな損失が生じることになります。
他方、医師法19条2項では、医師は求めがあった場合、正当な理由のない限り診断書作成義務を負うところ、既に労災書式の診断書を作成していることが自賠書式の診断書の作成を拒否する「正当な事由」といえるかについては疑問です。
今回のケースでは、医師から被害者ご本人に伝えられただけでなく、弁護士丹羽名義の書面を直接送付しても同じ回答でした。
このクリニックの医師に、自賠書式の後遺障害診断書を記載いただけないとすれば、労災書式の後遺障害診断書の写しをこれに代えて自賠責調査事務所に提出せざるを得ませんが、調査事務所が受け付けるかは不明です。
また、ここが最も問題になりますが、今回のケースでは、弁護士丹羽の介入がなく労災書式の後遺障害診断書が記載され、労基署に提出されてしまいましたので、この後遺障害診断書の内容が適切かをチェックすることができません。
仮にこのようなクリニックの対応では、労災書式の後遺障害診断書の診断書が不適切であったとしても、その修正や加筆に応じてもらえるかも疑問です。
交通事故で適切かつ公正な賠償を受けるためには、主治医の先生や診療機関といかに良好な関係を築いていけるかにかかっているといっても過言ではありませんし、大多数の医療関係者の方々の多大なるご尽力とご協力をもって、我々交通事故賠償に係わる者としても、被害者の方々の損害の適正な回復を図ることができています。
そのため、当事務所としても医療関係者の方々には、人の生命や身体の回復を図る医療の専門家への敬意を表し、決して医療の本筋ではない賠償実務に対するご協力の感謝の念を欠かさず対応しているつもりです。
そのような中、このような賠償に対して非協力的なクリニックがでてくることはとても残念に思います。
なお、当事務所では、労災交通事故については、症状固定を迎えたら、まずは自賠責書式の後遺障害診断書を作成いただき、その後、労災での障害申請をしていただくという流れで進めていますが、このような流れで進めていけば今回のような事態を避けられて可能性はあったのではないかとも考えています。
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被害者側
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