保険会社
損保担当者の言動は契約者(加害者)の刑事処分に大きく影響します~損保ジャパン名古屋保険金サービス第三課物損担当者の言動について
人身事故を起こした加害者は、過失運転致死傷の被疑者として取り調べを受け、場合によっては被告人として刑事裁判にかけられる場合があります。
そのため、加害者やその弁護人は、何とか不起訴とし、起訴されても実刑を免れようとまさに必死の弁護活動を繰り広げます。
しかし、加害者から示談代行の権限を与えられた加害者側損保会社担当者の言動が、そのような情状立証・弁護活動を無にし、加害者の刑事処分や罪刑を重くすることにつながることもあります。
これからご紹介する件はまさにそのような損保会社担当者の対応が、契約者である加害者の刑事処分を重くする恐れのある事案です。
この事案を通じて、損保会社の担当者は、自らの言動や対応がお客さんである加害者の将来を左右しかねないことを十分認識すべきだと弁護士丹羽は考えます。
事案の詳細です
事案は、トラックから追突を受けた四輪車の母子を被害者とし、お母様は事故後1か月以上経っても意識不明の重体の状態にあり、四輪車の運転者であるお子様(成人)も負傷したというものです。
被害を受けた四輪車は全損となり、加害者のトラックに付帯されていた損保ジャパンから代車を支給され、お子様は自らの通院に加えお母様の看護のため毎日入院先に通い、意識回復に努めていました。
お子様自らも症状で苦しんでいる中、意識を回復しないお母様を案じ、まさに身を削ってその看護に徹し、心身共に相当疲弊していました。
その折、突如損保ジャパン名古屋保険金サービス第三課の物損担当者から、代車利用から30日間を経過したので、代車を返すよう求められました。
その間、物損担当者からは経済的全損になることは伝えられましたが、賠償額については何も伝えられていませんでした。
それを聞いたお子様は、代車を引き上げられては母の看護にも行けなくなることを恐れ、時間的にも精神的にもそんな余裕など到底ない中で、身銭を切って急ぎ代替車両の購入手続を行い、この7月中にも納車がされることになりました。
その折、この物損担当者から再び代車を返すよう連絡がありました。
本件の委任を受けていた弁護士丹羽は、当初の連絡を受けてから急ぎ代替車両の購入を急ぎ、今月中には納車予定であること、そもそも賠償の提示を受けたのは代車の返還要求を受けたのと同じ日の10日前のことであって、代車利用の猶予は認められるべきであること、被害状況にかんがみれば、被害者は事故直後からすぐに代替車両を購入する準備ができる余裕はないことを伝えました。
これに対し、この物損担当者は、要旨、
「既に代車利用から30日間を経過しており、当社としても譲歩している状況である。当社は判例タイムズにしたがい話をしている。利用延長を認めて欲しいなら、そちらが立証せよ。」
と話しました。
これに対し、弁護士丹羽は、そのような強硬な態度はそちらの契約者の刑事処分に影響することになるが、大丈夫かと確認しましたが、担当者は意に介さず、「立証資料を出せば考慮すると言っている。」と話すばかりでした。
この担当者の発言は正しいのか
そもそも、この担当者がいう判例タイムズには代車利用の相当期間として30日間と明記されているわけではありませんし、代車利用の相当期間は、事情に応じて見積書や賠償額の提示を踏まえた代車購入に必要な相当期間とされているに過ぎません(別冊判例タイムズ39・78頁)。
本件では、具体的な賠償額の提示があったのは、事故後1か月を経過してからですし、提示額も市場価格よりも低額でこの金額では到底示談できないものでした。
また、車両所有者のお子様も受傷し、お母様も意識不明に陥っている状況下で、事故直後すぐに代車購入手続に入ることは現実的であるとも考えられません。
納車日まで最大でも2か月間しか経過しない本件では、この物損担当者がしたがっているとする「判例タイムズ」の基準にしたがっても、納車日までの代車の利用は認められてしかるべき事案です。
しかも間の悪いことに、この間に、損保ジャパンの別の人身担当者から加害者が直接謝罪したい旨の連絡がありましたが、物損担当者が一方的に代車を引き上げると主張している現状では、被害者側としても到底加害者からの謝罪など受けられるはずもありません。
担当者の言動をどのように加害者の刑事処分につなげるか
もちろん、重大事故の被害者だからといって、あらゆる損害が認められるべきだというつもりは毛頭なく、賠償実務上一般に認められる損害に限って認められるべきことは他の被害者と何ら異なることはありません。
しかし、この物損担当者の言動により、加害者の刑事手続上の情状に有利に影響する、被害者への謝罪と宥恕(赦し)を得る機会は失われてしまいました。
また、この物損担当者の言動により被害者側の怒りも増し、処罰感情は峻烈なものとなり、また、賠償額全体から考えれば些細な金額に過ぎない代車費用を出し渋る損保ジャパンの対応から、加害者から十分な賠償を受けられるか不安に陥っています。
そこで、加害者の捜査を担当する所轄の警察署に充てて、上記の事情を説明したうえで、加害者に対して厳罰を求める上申書を提出することにしました。
重大事故を起こした加害者にとって、起訴されるか、実刑となり刑務所に入るかはその後の人生を大きく左右することは言うまでもなく、だからこそ加害者本人や弁護人は必死に罪を軽減するための手を尽くします。
いくら加害者が被害者に対し誠意のある対応をしたいと思っていも、弁護人が罪を軽くすべく弁護活動を重ねたとしても、このような加害者に代わり示談を行う損保会社担当者が被害感情を逆なでする対応をしていては元も子もありません。
弁護士丹羽は、損保会社の担当者の中には、契約者が刑事手続きの渦中にいることを全く意識せず、平然と被害感情を逆なでする言動をする者もいますし、特に最近増えてきている感がいたします。
示談代行者である損保会社担当者は、示談代行は代理人として自ら意思決定を行う我々弁護士とは異なり、契約者や加害者自身の意思に基づく行為であることや、損保会社の示談代行権限が今から60年以上も前に激しい論争の末に特に法律で非弁行為の例外として認められた意味を今一度考えるべきです。
この担当者の言動の責任や結果は刑事責任として加害者が負うだけですので、特に損保ジャパン宛に抗議などせず、弁護士丹羽は粛々とこの物損担当者と交渉を継続するだけですが、自らの被害者側に対する言動が契約者である加害者の人生を左右する恐れがあることを、損保会社担当者は十分意識すべきだと考えます。
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