骨折後の後遺障害の対象は、骨の短縮・変形・偽関節化、人工関節置換術の施行等で、その内容は明らかであり、また、レントゲンやCTで癒合の状況などを経時的にとらえていくことがほとんどなので、後遺障害の認定に際して問題になることはさほど多くはありません。

しかし、骨折後癒合が十分得られたにもかかわらず、骨折部周辺の関節可動域の制限が生じたり、痛みや痺れが残存した場合、可動域制限・痛みや痺れによる後遺障害の認定を受けるためには困難が生じます。

例えば、骨折部周辺の関節の可動域に制限が生じたとしても、骨の癒合が十分得られ、骨の構造上、関節可動域に影響がない場合は、拘縮つまりリハビリ不全として後遺障害とみなされないことが多々あります。

ところが、実際には、単なるリハビリ不全ではなく、骨折部周辺筋腱類などの軟部組織や神経が骨折に伴い損傷されたことで、関節可動域に制限が生じたり、痛みや痺れを生じていることもあります。

そこで、交通事故により骨折した場合、骨の癒合が完全に生じ、骨の変形等による直接の後遺障害の認定は受けられなくても、関節可動域の制限や痛み・疼痛などの神経症状等で12級以上の後遺障害等級の認定を受けられるか検討することが必須です。


脊椎圧迫骨折


脊椎を圧迫骨折した場合、「脊柱に変形を残すもの」として11級の後遺障害の認定を受けることは比較的容易です。しかし、その反面、保険会社等との示談時もしくは裁判時に、11級に該当する20%の労働能力の喪失が生じていないとして、逸失利益を争われることが多々あります。


CRPS


骨折後に灼熱痛や知覚過敏、皮膚温差、浮腫・発汗変化などが生じ、これらが持続するようであれば、CRPS(複合性局所疼痛症候群)を発症している可能性もあるので、このような症状がでれば、すぐに主治医に症状を訴え、然るべき処置を行ってもらってください。

対策


1 レントゲンだけでなくCTやMRI画像の撮影


関節可動域の制限や神経症状が生じやすい関節内骨折や関節に近位の骨折の場合は、骨折部周囲の軟部組織への損傷の可能性を確認したり、関節内の微小骨片の存在を見落とさないために、レントゲンだけではなくCTなどを事故直後に撮影することが必要です。また、肩付近を骨折した場合であれば腱板や関節唇、膝付近を骨折した場合であれば半月板や靭帯、手足関節付近を骨折した場合であれば靭帯等など、関節の可動のために必須な軟部組織が損傷していないかを確認するため、事故直後にMRI画像を撮影してもらいましょう。
骨折自体が軽微な場合、近位関節のMRIまでは撮影されずに、これらの軟部組織の損傷は見逃されることがありますので、注意が必要です。


2 神経伝導速度検査・筋電図検査の施行


骨折部周辺もしくは遠位に痛みや痺れ等の神経症状が生じている場合、骨折に伴い神経が損傷されていることがあります。そこで、神経損傷の有無を調べるため、神経伝導速度検査や筋電図検査を施行していただきましょう。 これらの検査は、基本的に「治療する」ための検査ではありませんので、医師から積極的に勧められることはありません。そのため、患者側から主治医に対し、事情を説明して検査をお願いしてください。ただし、一般の病院ではこれらの検査を行う施設や専門家がいないことがほとんどですので、紹介状をもって大学病院などで検査を受けることが一般です。
筋電図検査・神経伝導速度検査の詳細につきましては、こちらのページをご覧ください。


3 症状の原因の後遺障害診断書への記載


関節可動域の制限や痛み・痺れ等の原因が、骨折に由来する場合、その旨を後遺障害診断書に記載してもらうことが必要です。例えば、症状内容や骨折の部位・程度などから、ある神経の損傷が疑われる場合、その旨をなるべく具体的に後遺障害診断書に記載してもらいます。


4 脊柱圧迫骨折の場合の労働能力の喪失


脊柱の圧迫骨折の場合、労働能力喪失率を争われることが多いので、事故後、労働能力をどれだけ喪失したか、例えば、「事故前は○○の業務が可能であったが事故後できなくなった。」などの事情を、事故直後からできるだけ具体的に記録化しておくことが大切です。


CRPSの検査


CRPS様の症状を生じている場合は、症状をカルテ等に記載してもらったえうえで、発汗テスト、サーモグラフィー、骨シンチグラムなどの検査をしてもらい、確定診断を得ることが必要です。


シェアする