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本件の顛末~正式な抗議前に丁寧かつ誠実にご対応いただきました。R4.6.23追記

本件につきましては、担当者の言にしたがい、依頼者から委任状をいただき書面をもって正式な抗議を行う準備を整えていましたが、東京海上日動火災保険会社名古屋損害サービス第二部損害サービス第三課の担当者の上席の方からご連絡をいただき、丁重に本件の担当者の言動は適切ではなかったこと、治療費の支払いを人傷でしていただける旨の説明を受けました。

正式な抗議前にこのような対応をしていただけたことは極めて稀ですし、担当者の対応が適切ではなかったことを率直に謝罪されるなど、大変ご丁寧かつ誠実な対応をしていただきました。
東京海上日動火災保険株式会社の適正かつ迅速な内部統制・監査状況や法令順守の姿勢を垣間見ることができる一場面でした。

~以下が弁護士丹羽が問題視した本件の事案の概要になります

本日、令和4年6月13日、東京海上日動火災保険株式会社名古屋損害サービス第二部損害サービス第三課の担当者から、人身傷害保険の支払いについて大変呆れた対応を受けましたので、以下ご報告いたします。
本ブログでもご紹介しておりますとおり、近時、損保会社が人身傷害保険の性質を無視し契約者の利益を害するような言動をすることが相次いでいます。

このような流れに警鐘を鳴らすとともに、交通事故被害者の方々も損保会社担当者の言動に惑わされず、人身傷害保険につき適正な対応がなされているか、弁護士等の専門家に相談されることをお勧めいたします。


事案の概要


依頼者は、乗用車を運転・丁字路交差点突当り路手前で停止中、直線路右方から左折進行してきた乗用車から衝突を受け、頚部等に傷害を負ったものです。
相手方加害者の保険会社である日新火災海上保険株式会社は、加害者が対人賠償保険の使用を拒否していることを理由として、示談代行(対人賠償保険の支払い)を行わなかったため、依頼者は、自身の東京海上から、人身傷害保険での治療費の支払いを行う承諾を得て通院を開始しました。

その後、弁護士丹羽が依頼を受けましたが、加害者本人に直接受任通知を出すことは憚れましたので、念のため日新火災に確認したところ、前言を翻し、幸いにして日新火災が示談代行を行うことになりました。

そうしたところ、東京海上担当者から連絡があり、弁護士丹羽が10分程度にわたり、再三このまま人身傷害保険で治療を続けたい旨お願いしましたが、東京海上担当者は、以下のとおり支払わない理由を延々と述べて人身傷害保険での治療費の支払いを事実上拒否しました。

①『約款どおりにしか払えませんから、バラバラとされるより相手方に全部支払ってもらった方がいいんじゃないですか。』『わざわざわけられる必要もありませんので。』『その方がスマートでいいのではないでしょうか。』
②『対人社の方に支払いをしていただくことが自然ではないかと。』
③『対人社としても困ってしまうと思いますよ。』
④『休業損害について余分に請求する際にはできなくなってしまうと思うんですけども。』
⑤『こちらも自賠社に求償しますが、一番困るのが弊社で慰謝料が(自賠責の限度額)120万超えた場合に、弊社が治療費だけ払って求償できなくなってしまう。加害者請求の方が優先されるので後回しになってしまう。』

結局、『受任通知が来ていないので、直接契約者さんに連絡する』として、話は平行線に終わりました。

東京海上担当者の何が問題か

そもそも、保険約款上も保険法その他法令上も、相手方加害者の対人賠償保険が使える場合に、人身傷害保険が使用できないという規定はなく、対人賠償保険が使える場合においても人身傷害保険を使用することは全く問題はありません。

そして、本件では当初から相手方日新火災が対人賠償保険の使用を拒否しており、一転その使用を認めたからといって、治療費の支払いに応じたわけではありませんし、今後スムーズに治療費の内払いに応じるかはわかりません。
また、東京海上の人身傷害保険が治療費の支払いに応じるとしたことで、既に病院から東京海上宛に診断書及びレセプトが届き治療費の請求がきているとのことでしたので、再度日新火災に(支払われるかもわからない)内払い交渉を行ったうえで、病院に診断書等の再作成をお願いして、日新火災宛に再請求してもらうよりは、そのまま人身傷害で支払ってもらった方が、はるかに理にかなっています。

にもかかわらず、東京海上担当者は、『約款上支払えないことはない』、『支払いを拒否しているわけではない』と言いつつ、上記のとおり人身傷害の支払いを頑なに拒否しました。

まず、①及び②の理由についてですが、当事務所でも相手方の対人賠償が使える場合であっても、人身傷害保険を先行して請求する場合は多々あり、「約款どおりに」人身傷害を請求した後に相手方対人賠償保険に差額を請求することはよくあります。
先に述べたとおり、人身傷害保険か対人賠償かいずれを使用するかは、被害者側の自由で何の制約もありませんし、人身傷害保険が「約款にしか支払われない」ことも「わざわざわけて」請求することは当然の前提で百も承知で対応していますから、人傷社からそのようなことを言われる筋合いはありません。

当方の請求手続上も、相手方対人賠償に請求する際に人傷保険で支払われた分については既払金として差し引くだけですし、当方の手続上も全く問題ありませんし「スマート」です。

③の理由についてですが、対人社の日新としても人傷で支払った分や自賠責の求償分を確認するだけの話ですから、特段困ることもありませんし、そもそも日新火災が当初から対人対応をしていれば何の問題もなかったのですし、日新火災も人傷で対応することはわかっていますので、なぜ当方が日新火災に配慮しなければならないのかは大いに疑問があります。

④の理由については、約款上の制約で人身傷害保険から休業損害が全額支払われなかったとしても、先に述べたとおり、日新火災に差額を請求しますので、「余分に請求できなくなる」というのは明らかな虚偽です。

⑤の理由については、人傷保険を支払った東京海上はその分相手方の自賠責保険に求償しますし、仮に加害者請求により自賠責の限度額を超え、真に自賠責から求償できない事態になったとしても、人身傷害保険は契約者から人身傷害保険としての保険料の支払いを受けており、自賠責からの求償の有無を問わず支払わなければならないものですので、理由にはなりません。
そのような自賠責求償の問題は保険会社内部の問題であり、そのことを理由にして、契約者に対し人身傷害保険の支払いを事実上諦めさせようと説得し続けるのは全くの筋違いだと思います。
むしろ、ここが東京海上の本音ではないかと考えられます。

本件の最も不快に思われた点

この担当者の対応で最も不快に思われた点は、弁護士丹羽を説得できないからといって、私との話を拒否し私の依頼者である「契約者と直接話す」とした点です。
確かに、この時点で私は依頼者から人身傷害保険金請求の委任を受けていませんので、担当者の対応は違法でも何でもありません。

しかし、担当者は、上記のとおり私に対し、再三理由を述べ人身傷害保険を使わないよう説得していながら、私を説得できないと見るや、手のひらを返し私の依頼者の「契約者と直接話す」といって、私との話し合いを拒否しました。

当然のことながら、私はすぐに依頼者に事情を話し、正式に本件の委任を受けたうえで、委任状が届き次第、東京海上日動火災保険株式会社に対し、本件の是非を問う準備に入ります。
むしろ、契約者は、弁護士を説得できないとみるや、事情をよく知らない契約者を説得しようとまでする東京海上の姿勢をどう思うでしょうか。
そのような会社全体の姿勢やあり方に関わることすら気にしようとしない担当者の言動にはほとほと呆れはてています。

人身傷害保険について損保会社担当者は、我々専門家である弁護士に対しても、このような不適切と思われる対応を平気でとるようになってきました。
単に担当者が仕事が増えて面倒臭いことを理由としているならば、担当者個人の問題として事態はまだましとはいえますし、損保会社担当者に弁護士が「なめられて」いるのであれば、毅然とした対応を取らない・取れない我々弁護士側の問題ともいえるでしょう。

しかし、以前の損保ジャパンの事案(こちら)のように、損保会社が「組織的」とも思わざるを得ない人身傷害保険の不払いを行っているなら極めて問題です。

本件の顛末はまたご報告いたします。


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