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先の「○○は請求出来ますか?とのご質問について」のブログでご説明した点と同様に、健康保険の利用についてもステージに応じた説明が必要になり、このことが被害者の方々の理解を妨げる要因になっていますので、先のブログに続いて説明します。


1 事故当初からの健康保険利用の場面


被害者側にも過失がある場合、支払われた治療費についてもご自身側の過失相当額については自己負担しなければならず、自己負担額を減らすために健康保険を使うことは賠償実務上常識になったといっても過言ではございません。

健康保険を利用すれば自己負担額が減らせる理由についてですが、通常相手方保険会社が内払いをする場合には、診療機関は同じ治療であっても自由診療として1点15円から20円程度の診療報酬を請求しますが、健康保険を利用した場合、1点10円に定められていますので、健康保険を利用すれば自己負担額を半分から3分の2に減らすことができるからです。
なお、交通事故の場合でも健康保険が使えることはこちらのブログでもお知らせ済です。
また、業務災害や通勤災害では健康保険は使えない事、及び、健康保険を利用する場合、第三者行為傷病届の提出が必要になること、その他の留意点についてはこちらのブログをご確認ください。


2 打切りがあった場合の健康保険への切替えの場面


まだ治癒もしくは症状固定に至っていないにもかかわらず、相手方保険(共済)から治療費が打切りになり、これが違法ではないことは先のブログで説明したとおりです。

治療中に治療費の打ち切りがあった場合に取るべき手段として最もよくあるのが健康保険への切り替えです。
打ち切りがあった場合でも治療の必要性がある場合、引き続き通院が必要になりますが、その際いったん自己負担いただいた治療費については示談交渉もしくは訴訟の場面で請求していきます。
その際、治療の必要性と相当性が認められれば、自己負担した治療費の支払いを受けることができることは先のブログでもご紹介したとおりです。

ただ、打ち切り後、相手方保険会社が自由診療で支払っていた額をそのまま自己負担していくと、毎回の治療費は健康保険を利用した場合と比べて約6.7倍(診療報酬1点20円、健保3割負担の場合)にも及び非常に高額になりますし、万が一治療との因果関係が否定された場合、全額を自己負担しなければならないために現実的ではありません。
そのため、毎回の自己負担額を抑え、万が一に備えて治療費打切りがあった場合、その後の通院は健康保険を利用することになります。
この場合、最終的に自己負担額については相手方保険会社に請求しますし、第三者行為傷病届の提出も必要になります。
なお、労災事故の場合は、健康保険が使えませんので打ち切りの時点で労災に切り替えることになります。


3 治癒もしくは症状固定後に通院する場面


治癒若しくは症状固定した場合、これ以降の治療費は賠償とは無関係な治療となりますので、原則として相手方保険会社に治療費を請求できなくなります。
そのため、治療終了後も引き続き通院をされる場合、私病や慢性疾患と同様に健康保険を利用し、ご自身の判断で全額自己負担して通院していただくことになります。

この場合、相手方に治療費を請求できなくなりますので、治癒若しくは症状固定した場合第三者行為災害届を出す必要はないと考えられますし、労災事案で労災のアフターサービスが利用できないとのことであれば、労災事故で生じた傷病の治療であっても、労災事故との相当因果関係が消失した治療として、健康保険を利用することが可能になると考えられます。
また、原則として賠償とは無関係な治療になりますので、これまで通院していた診療機関とは全く別の機関で違う内容の治療を受けていただくことも全く構いません。

「症状固定後に通院してもいいですか?」というご質問も良くいただきますが、このように健康保険を利用して通院いただくことは全く構いません。
ただ、上記の1及び2と異なり、治療費は相手方保険会社に請求できないことに注意が必要です。


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