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自賠責後遺障害診断書は、自賠責保険で後遺障害認定を受け、訴訟でも被害者の方の残存症状を明らかにするために非常に重要な書類になります。
その作成権限は、事故後被害者を診察してきた主治医の先生にあるのですが、その作成費用については病院によってまちまちで、一般的には5000円前後で1万円を超えると高いという印象を受けます。
また、大病院では書類作成規定が定まっているためさほど高額にはなりませんが、クリニックなどでは事前に費用は知らされず、主治医の先生の言い値になってしまうので、高額になる場合も散見されます。


そして、その作成費用ですが相手方保険会社が病院に直接支払いをしてくれれば問題はないのですが、多くの病院では、保険会社からの不払いを嫌い、被害者の方々の実費負担を求めます。
そして、相手方任意保険会社のみならず相手方自賠責保険についても、被害者が自己負担した後遺障害診断書作成料は「後遺障害が認められたら支払います」という立場をとっていることが多く、結果的に後遺障害が認められない場合、被害者が自己負担しなければならなくなります。

以前、あるクリニックで後遺障害診断書作成料として2万円を請求されたことがあり、非常に驚き当ブログにも記載したことがあったのですが「不適切な病院の対応・2」
今回これを遥かに超える、3万2400円の極めて高額な後遺障害診断書料を被害者の方に負担させたクリニックがあり、被害者の方にとって大変憂慮すべき事態が生じましたので報告します。

作成いただいたのは、自賠責後遺障害診断書1枚のみで内容はこちらのPDFのとおりです。高額な自賠責後遺障害診断書
なお、このクリニックでは、6か月間98日の通院日数で90万円以上もの自由診療での治療費を相手方保険会社から支払ってもらっています。

医学的な知見をお聞かせいただく意見書や回答書の作成をお願いする際には、3万円を遥かに超える作成料をお支払することは多々あるのですが、通常の診断書のレベルに留まる(と思われる)この後遺障害診断書に3万円を請求するのは、疑問を感じざるを得ません。
交通事故被害者は症状固定の時点では金銭的に苦しい状況に追い込まれていることも多く、また、事前に後遺障害診断書作成料を知らされる機会もなく、仮に、そのような高額な費用が支払えず、後遺障害診断書を作成いただけないとのことになれば、自賠責での後遺障害認定は受けられず、公平かつ適正な賠償を受けられません。
最初に通院する際に、後遺障害診断書作成料を事前にお聞きすることも現実的ではありませんし、高額な作成料を知って、別のもっと作成料が安い病院で後遺障害診断書を記載してもらうと思っても、診断書作成目的で新たに通院することは正当な治療行為とはいえません。

確かに、後遺障害診断書の作成は、患者さんの病状の回復を目的とする主治医の先生にとっては、本業外の多大なお時間とご負担をおかけする作業です。
そして、その記載内容一つで患者さんに認められる後遺障害が大きく変わってくるとても大切な書面ですので、丁寧かつ慎重な作成をお願いしたいものです。
しかし、交通事故被害者にとって、後遺障害診断書は主治医の先生に書いてもらわなくてはならない唯一無二の書面であり、その費用は何としてでも支払わなければならず、また、結果的に後遺障害が認められなければ、自己負担しなければならない費用なのです。
交通事故被害者専門弁護士としては、主治医の先生方には、このような交通事故被害者が置かれた厳しい立場を理解いただき、常識的な金額をもって後遺障害診断書作成料をご請求いただき、万が一高額な請求をされるとのことでしたら、初診時にその旨被害者に伝えていただくか、院内での掲示やHPに明記するなど事前に知らせていただくような措置を講じるよう切に願っています。


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