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1 弁護士費用特約(弁護士費用保険、以下総称して「弁護士特約」といいます。)は、ご自身側の自動車保険に付帯されている保険で、一般に限度額300万円までは弁護士費用を損保会社が負担するというものです。
 弁護士特約は、自動車保険が付帯されている自動車に乗車中の交通事故のみにとどまらず、ご家族や同居の親族、別居している未婚のお子様などが歩行中や他の自動車に乗車中に交通事故に遭われた場合にも広く適用されます。
 また、掛け金も年間千円程度で、これを利用しても保険料の基準となる等級(ノンフリート等級)が上がるなどの不利益は生じません。

特に、損害額がそれほど大きくならない場合で、実費で弁護士費用(当事務所では20万円と取得額の10%になります。)を支払うと、弁護士に依頼しなかった場合に比して、依頼者様の保険金もしくは損害賠償金の受取り金額が少なくなる恐れがある場合にも、弁護士費用を気にすることなく安心して弁護士に依頼できますので、依頼者様にとっても非常に利用価値がある保険といえます。

当事務所では、弁護士特約を利用していただいた場合、依頼者様がご自身の保険会社に対し、弁護士費用の支払いについてお話しいただく手間や煩わしさを省くため、直接保険会社と弁護士費用についての話し合いを行い、依頼者様のご負担を最小限に抑えております。

2 しかし、ソニー損害保険株式会社(以下「ソニー損保」といいます。)、SBI損害保険株式会社(以下「SBI損保」といいます。)の2社につきましては、弁護士費用の支払いをめぐるトラブルが多発しております(直近のトラブルの内容は4及び5で詳述します。)。

当事務所では、これら2社との間のトラブル解決のための時間や労力の負担が過大になっており、本来依頼者様の事件解決のために使うべき大切な時間と労力を割くわけにはいきません。

何より、当事務所として、依頼者様一人一人の利益を第一に考え、最良の解決を目指して懸命に尽くすことにより、円満な事件の解決を果たし、依頼者様にも大変喜んでいただいたその後に、弁護士費用の件でトラブルになることは、弁護士として大変不本意なことですし、精神的な負担も大きくなります。

もちろん、中には過剰な弁護士費用を請求する弁護士もいますので、損保会社として、適正な費用を支払うための調査や話合いが必要であることは当然です。

しかし、当事務所としては、このような適正な評価を超え、依頼者様が支払った保険料により成り立っている損保会社が、支払う保険金を少しでも減らそうと、弁護士による依頼者様のための正当な業務遂行を過少に評価したり、時には難癖をつけてくるような状況を看過することはできません。

当事務所としましても、これまで長年、損保会社担当者に対し相当の資料をもって、当方の考えを伝え、悪質な場合には、関係機関への抗議等の措置を講じて参りましたが、これら損保会社との弁護士費用をめぐるトラブルは治まるばかりか、ひどくなる一方です。

そこで、当事務所へのご依頼を考えておられる交通事故被害者の方々には多大なご迷惑とご不便をおかけして大変申し訳ございませんが、当事務所では、平成27年8月1日をもって、弁護士費用をめぐるトラブルが多発しているソニー損保、SBI損保の2社の弁護士特約の取扱いを停止いたします。

近年、当事務所のように交通事故被害者側弁護士を標榜する弁護士が急増していますが、当事務所としましては、弁護士費用を支払う保険会社の顔を伺い、依頼者様の利益を損なう代理人活動が常態化していくことを危惧しております。

  一方で、自動車保険の契約者の皆様におかれましても、いざ事が起こった時に、契約者様ご自身が納得できない思いをしたり、交通事故の被害に遭った方々に辛い思いをさせないために、保険料が安いから、CMを良く見聞きするから、申し込みが手軽だからなどといった理由のみで自動車保険を決めるのではなく、交通事故被害者や契約者の方々に対し、速やかに公正かつ適正な保険金が支払われるかという損害保険の原点や本質に立ち返り、保険契約を締結していただく時期に来ているのではと考えています。

3 ソニー損保、SBI損保の弁護士特約に加入されている方からのご依頼につきまして

 これら損保会社の弁護士特約に加入されている方々からのご依頼も、もちろんお請けいたしますが、上記措置に伴い、弁護士費用につきましては、依頼者様に通常の弁護士費用(原則として20万円+取得額の10%、すべて後払い)をご負担いただき、依頼者様ご自身で、ソニー損保もしくはSBI損保に対し、弁護士費用相当額の保険金の請求を行い、支払いを受けていただくことになります。

4 ソニー損保との直近のトラブルについて

 (1) 弁護士費用は通常、着手金と報酬に分かれており、着手金については、受任した段階で、見込まれる経済的利益を基に算出することが一般です。
 ただ、当事務所では、交通事故による傷病の通院中にご依頼いただくことが多く、この場合見込まれる損害の予想ができません。
 そこで、治療が終了し後遺障害の等級認定を受けた場合など、依頼者様の賠償額を具体的に計算した段階で、弁護士特約を扱う損保会社に対し着手金を請求しています。
 その際、当事務所では、依頼者様のご要望を基に、客観的な資料、交通事故損害賠償実務の動向、近時の判例の傾向などにしたがい、適正かつ公正な損害賠償請求額を算定しております。

(2) ソニー損保(人傷・搭傷第1サービスセンター)は、弁護士費用の着手金の算定の段階で、依頼者様の損害額を独自に算定して、これを基に着手金の経済的利益を算出するよう求めてきます。
 本件は、児童が道路を横断中に普通乗用車に跳ねられ、腓骨を骨折し足首に障害が生じ、かつ、頭部に醜状痕を残した事案でした。
 当事務所では、具体的な損害の計算に際して、後遺障害逸失利益については、骨折後の足首の後遺障害は生涯持続するものとして、また、通院慰謝料については、頭部に自賠法上の後遺障害にはあたらないが、目立つ醜状痕を生じたこと、また、事故により学校生活を十全に営むことができなかったことなどを理由として、基準額を増額するなどして請求額を算定し、これを基に着手金を請求しました。
 ところが、ソニー損保は、(いわゆるむち打ち損傷でないにもかかわらず)特段の根拠も示さず、足首の障害は5年程度で治るなどとして後遺障害逸失利益を極めて制限し、かつ、頭部の醜状痕は後遺障害の認定を受けていないなどとして慰謝料の増額の主張を一切認めませんでした。

(3) これら主張は、加害者側の保険会社が、示談交渉の当初の段階で主張する最下限の主張と何ら異なりません。
 このような被害者の損害を制限する主張は、加害者側の保険会社の立場ならわからなくもないのですが、被害者(顧客側)の保険会社からなされることに全く理解ができません。

つまり、上記事情に照らせば、ソニー損保は、自己の契約者に対しても、損害を極めて制限する請求しか認めない立場であるといわれても仕方がないと考えられます。

この点、相手方保険会社との示談交渉では、それぞれの主張額を上下限として、相互に譲歩や妥協できる点を探りながら、双方に妥当だと考える示談額に達すれば示談に至りますし、交渉が決裂すれば請求額を訴額として訴訟等を提起することになります。

しかし、ソニー損保の考えに従えば、損害の算定の段階で最小限の請求しか許されず、当然その額を上限として交渉や訴訟に挑まなくてはならなくなり、最終的に被害者の方々に支払われる賠償額が少なくなってしまいます。

これを避けるためには、相手方保険会社に対するのと同様に、依頼者様の保険会社に対しても、当事務所の見解が適正かつ公正であることを、相当の証拠資料をもって厳密に証明しなければなりません。

これでは、敵方となる相手方が2つに増えたのと何ら変わりなく、正当な弁護士費用を得るためという専ら当事務所の利益を図るためだけに、依頼者様にかけられる時間と労力を割いて、二重の時間と手間を掛けなくてはなりません。

直近のトラブルは以上のとおりですが、当事務所では、ソニー損保の考え方は、それが保険料を支払う顧客であるか否かに関わらず、交通事故被害者の方々の利益を著しく損なうものと判断し、ソニー損保の弁護士特約の利用をお断りするに至りました。

5 SBI損保との直近のトラブルについて

 (1) SBI損保(損害サービス部第8サービスセンター)の場合の直近のトラブルもソニー損保と同様に、着手金の請求の際の見込まれる損害額(経済的利益)の算定について、自己の契約者である交通事故被害者にとって極めて不利な内容を押し付けてきたという内容です。

本件は、依頼者様が普通乗用車で優先道路を走行し交差点を直進通過しようとしたところ、劣後道路から普通乗用車が交差点に進入し、衝突したとの事案です。

当事務所では、事故直後、加害者がノーブレーキで時速30キロメートルの制限速度を超過し、時速50キロメートルで交差点に進入したと話していたとの依頼者様の話や、各車両の損傷状態や停止位置等の客観的事情等を基礎とし、過失割合については、基本過失割合10:90に対し、加害者側に著しい過失があったとして依頼者様側の過失を10パーセント減算し、依頼者様側を0パーセントとして損害を算定しました。

(2) ところが、SBI損保は、上記事実や依頼者様の意向を無視し、「交差点での出合い頭事故でしかも人身事故の被害者がいる場合は自賠法の趣旨に照らして、0:100は基本的に難しいと考えます。」などの説得性に欠ける理由で、依頼者様側の過失を10パーセント認めるよう主張してきました。

しかも、当方の法的に相当性を有する根拠ある主張に対し「(当方の過失0パーセント主張は)交渉戦略上当然ではありますが」などと言いがかりをつけてくるなど、単なる増額のためだけの根拠のない主張であると断じてくる始末です。

(3) また、当事務所では、依頼者様側にも過失が認められ、かつ、依頼者様が人身傷害保険に加入されている場合、過失減額分を人身傷害保険から回収し、依頼者様に過失がなかったのと同様の経済的利益を得ていただくため、相手方と交渉する前に先に人身傷害保険を請求することが一般ですが、SBI損保は、人身傷害保険金を請求するなら先に支払った弁護士費用を返せと主張したこともありました(この主張は当然のことながら後に撤回されましたが)

(4) 以上のとおり、SBI損保においても、契約者である依頼者様の利益を殊更無視する姿勢が明確になりましたし、同社は、その他にも以前より自賠責損害調査事務所での醜状障害面談に弁護士が立ち会う必要性はないなどの不当な主張を繰り返しておりましたので、当事務所では、同社の弁護士特約の利用をお断りするに至りました。


平成30年6月28日追記

現在においても、当事務所ではSBI損保の弁護士費用特約の取り扱いはお断りしているところですが、最近SBI損保側でも当事務所の依頼を拒絶していることが判明しましたのでご報告します。

知人が交通事故被害に遭い、弁護士費用特約はSBI損保でしたが、知人ということもあり、相手方保険会社に対する損害賠償事件を受任することにしました。
弁護士費用特約を使用する際は、事前に保険会社の許可が必要になりますので、知人にも一応SBI損保に対し、当事務所に依頼したい旨を伝えてもらったところ、知人によりますと、SBI損保の回答は「丹羽先生のところとはケンカをしてますので、弁護士費用特約の利用を認めません。」とのことでした。

当事務所は、普段から弁護士費用特約の請求の際、過剰な請求や無理な主張をしているわけでは全くなく、SBI損保とも「ケンカ」しているつもりは毛頭なかったのですが、SBI損保側も当事務所の依頼を拒絶していることが明らかになりました。
交通事故被害者専門法律事務所として、日々交通事故被害者のためだけを考え、懸命に業務に取り組んできた甲斐もあり、当事務所については、SBI損保以外の多くの損保会社や担当者に認知いただき、信頼と理解を得られた結果、示談交渉を円滑に進められ、今では非公式に(当事務所は被害者側の立場を貫くため、いかなる損保会社とも顧問契約などの関係をもっていません。)、保険会社担当者から被害者の方に当事務所をお勧めいただくこともございます。

被害者側交通事故専門弁護士として、SBI損保に「ケンカをしている」と言われ、受任を拒絶されることは、非常に光栄であるとさえ思っています。


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