massmedia

令和5年7月25日放送NHKラジオ第1「Nらじ ニュースアップ『ビッグモーター保険金不正請求問題』に弁護士丹羽が、電話で生出演をし8分ほどお話しする機会をいただきました。
本年8月1日午後8時まで聞き逃し配信がNHKラジオ様のHP上(こちら)で聴けますので、ご興味のある方はお聴きください。


弁護士丹羽がラジオでお話しした内容


まず、冒頭、本日開かれたビッグモーター兼重宏之社長の記者会見の感想を尋ねられ、弁護士丹羽は、
 「社長や経営陣の保身や逃げ切りを図った印象で、本当に経営陣が不正請求を知らなかったのか、捜査機関による強制捜査を期待したい。」とお話しました。

ユーザーに対する補償問題については、
 「過剰に支払った修理費の返還や、過剰請求がなければ保険を使わなかった場合は、保険等級が下がったことによる保険料の値上がり分の請求ができる。立証のハードルは高いが、修理自体が不適切であれば、適切に修理するための費用も請求できるのではないか。
  また、民事賠償上、物の損害に対する慰謝料請求は認められにくいが、本件は組織的な悪質な犯罪行為であり、ユーザーの怒りや不安は大きいので、裁判所が物に対する慰謝料を積極的に認める契機になればいい。」とお話しました。

ビックモーターの刑事責任については、
 「わざと車を傷つけた点は器物損壊罪にあたり、事故による傷と装って保険金を受け取った点は詐欺罪に当たる可能性がある。直接の行為者だけでなく経営陣や店舗責任者も、不正を指示していたり、黙認していた場合も直接罪に問われる可能性がある。」とお話したうえで、
 「ただ、詐欺罪については、直接の行為者と利益の帰属との間の因果関係の証明には難しさがある。」とお話ししました。

修理や車検などに対する疑心暗鬼が生じるかもしれないとの指摘については、
 「修理の適性は専門性が高く、保険が絡む場合は保険会社がちゃんとチェックしているという建前になっているが、今回そのチェック体制も問題となっているので、今後は修理が適正かをダブルチェックしなければならなくなるし、今回の件を機に、修理工場なり保険会社の体制を今一度見直し膿を出し切り、透明性を確保することが求められている。」とお話ししました。


自動車整備士や修理工場の皆様へ


今回のビッグモーターの不正請求のニュースは、極めて専門的・技術的な自動車修理業界や保険業界を舞台に、その専門性をカーテンとして不正が繰り返されていたという大変大きな社会問題です。
ビッグモーターは過剰な修理により、損保会社はビッグモーターからの保険契約者の紹介によりそれぞれ利益を上げた半面、不必要な修理をされたユーザーや保険使用による等級ダウンで保険料が増大した保険契約者だけでなく、支払保険金の増大に伴う保険料率の増加による保険料の値上がりの負担を余儀なくされた損害保険契約者全体が被害者といえる大事件です。
今後、ビッグモーターに対しては、損保会社・ユーザーからの民事賠償請求、国交省・金融庁等からの行政処分、会社経営者らに対する刑事処分とさらに大きな展開を見せていくことになるでしょう。

そればかりか、ラジオでもキャスターから質問があったとおり、真摯かつ真面目に日々懸命に車の修理に取り組んでおられる修理工場や自動車整備士の皆様への信頼を大きく失墜させた点については到底許しがたいと考えています。

昨今、自動車整備士の皆様への待遇が厳しいことが指摘されている反面、自動車の自動化やIT化が進み、整備士の皆様にはより専門・技術的な能力が求められています。
しかも、日々真面目に事故修理をしているにもかかわらず、損保会社のアジャスターから少しでも支払う保険金を安く済ませるために、修理内容に難癖をつけられ、涙を呑んで修理費の減額に応じている中、ビッグモーターの修理については損保会社が『完全査定レス』で通っていたなんて、本当に腑が煮えくり返る悔しい思いをしていることと存じます。

弁護士丹羽は、そのような大変厳しい状況下で、真面目な修理工場をあざ笑い、追い打ちをかけるように自動車修理への信頼を喪失させたビッグモーターの罪は大変重いと考えています。

スーパーカーブーム世代で自動車が大好きな弁護士丹羽にとって、自動車は幼いころからの憧れですし、自動車を弄れることは今でもとても格好良く憧れています。
今後も自動車が生活必需品でありつづけることにも変わりませんし、自動車整備士は社会に必要不可欠な重要なインフラの一つです。
メーカーがいくら魅力があり性能が良い自動車を開発したとしても、その修理が十分できなければ、何の価値もありません。

今回のビッグモーターの不正請求の問題を機として、今まで以上に子ども達が自動車整備士にあこがれ、整備士の待遇がより改善され、社会が修理工場を全面的に信頼し、整備士の皆様がプライドと信念をもって仕事に臨み、安心して自動車に乗れる社会がこれからも続いていくことを心から願っています。


シェアする