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ここ数日、ビッグモーターについての取材が相次いでおりますが、令和5年7月26日TBSテレビ「THE TIME」からWEBでのリモートにより、また、同月27日同社「Nスタ」から電話により、それぞれビッグモーターの件に関しての取材をいただきましたので、取材に対する弁護士丹羽の回答を記載いたします。


TBSテレビ「THE TIME」からの取材内容


「THE TIME」様からは、主にビッグモーターの行政処分の内容やその影響についての取材をいただきました。


ビッグモーターに対する国交省の行政処分


弁護士丹羽は、ビッグモーターに対する考えられる行政処分について、国交省(地方運輸局)からは、不整な修理を行ったことについて道路運送車両法に基づき一定期間の認定及び指定自動車整備自事業者の取消しや整備事業の停止命令が下される可能性があるのではとお話ししました。
そして、その影響については、ビッグモーターで中古車を購入し、分解整備を伴う定期検査等のメンテナンスサービスを受ける契約をしていた場合、そのサービスが受けられなくなる恐れがあること、また、新たにビッグモーターで中古車を購入する場合、その中古車がしっかりとした販売前点検をしていない恐れがあることなどをお話ししました。


ビッグモーターに対する金融庁の行政処分


ビッグモーターは保険代理店として、損害保険の販売窓口になっていましたので、金融庁からは、例えば水増しした保険金請求の査定を見逃してもらう代わりに、特定の損保会社の保険を優先的に販売したという不正な手段により保険を販売したという点で、一定期間の保険代理店(保険募集人)登録の取消し、募集停止等の処分が下される可能性があることをお話ししました。
そして、その影響については、ビッグモーターで中古車を購入した場合、購入者は自賠責保険や任意保険を自分で加入しなければならないことになるとお話ししました。


損保会社に対する金融庁の行政処分


ビッグモーターの不正な保険金請求に加担、容認し、またはこれを知って黙認していたような損保会社は、不正な保険金請求を行った点やそのチェック体制を構築していなかった点で、一定期間の一部業務停止(例えば3か月間の自賠責保険金の新たな契約)や再発防止のためのコンプライアンス強化等の業務改善命令が下される可能性があることをお話ししました。
そして、その影響については、一部業務停止期間は当該保険の新たな契約ができなくなるおそれがありますが、ただ、今回の件で損保会社が保険金の支払いができなくなるような処分が下されることはないので、既存の保険関係には何の影響もないので安心していただきたいとお話ししました。


「Nスタ」からの取材内容


「Nスタ」様からは、主に損保会社の責任についての取材をいただきました。

損保会社に対する考えられる処分について


行政処分


昨日の「THE TIME」様からの取材での回答内容に加え、より掘り下げて、損保会社が、仮に不正請求を知らなかったとしても、これを見過ごしてしまったということがあれば、適正な保険金支払いのチェック体制が整えられていなかったとして、業務改善命令の対象となる可能性はある旨お話ししました。


損保会社担当者の刑事責任


通常では考えられずあり得ない事ではありますが、損保会社の担当者が、ビッグモーターの不正請求を積極的に指示していたような事実があれば、その担当者は、契約者に対する詐欺罪や器物損害罪の共犯に問われる可能性もなくはないが、ユーザーに対する詐欺罪の成立については、被害者の財産的損害が何かについては、難しい問題はある旨お話しました。
なお、今回の取材の対象ではないのでお話ししませんでしたが、ビッグモーターの不正請求に加担していた損保会社の担当者には、損保会社に対する背任罪も成立する可能性がありそうです。


民事責任


損保会社が、ビッグモーターからの不正請求を指示していたり、気付くことができたにも関わず見逃していたというような場合で、契約者が修理費を多く支払わされたとか、保険料が値上がりしたという場合、契約者からの損害賠償請求の対象となりえる旨をお話ししました。


弁護士丹羽が考える今後の展開


今回の件については、国交省や金融庁という行政機関も動き出し、ビッグモーターだけでなく、損保会社も視野に入れた新たな広がりを見せてきたように思えます。
現在の報道状況に照らすと、今後、ビッグモーターに対しては、中古車販売や買取方法に問題がなかったかという点で消費者契約法に基づき消費者庁が、労働条件や就労環境、給与の支払い等の雇用関係に問題がなかったという点で労働基準法に基づき厚労省(労基署)が動きを見せる可能性も予想されます。
さらには、ビッグモーターの従業員が詐欺罪もしくは器物損壊罪で処罰され、ビッグモーターが指導・監督責任を果たしていなかったような場合には、各都道府県警察公安委員会による古物営業法に基づく、中古車販売業の許可取消しや一定期間の営業停止命令が下されることも考えられます。

そして、今現在全く様子が見えない捜査機関も決して静観しているわけではなく、これだけの被害が大きく世間を騒がせている大事件ですので、当然のことながら捜査態勢を整えながら、証拠を押さえたり情報を収集したり関係者から任意で事情を聴取したり水面下で機を見ているはずです。
捜査機関に対しましては、国民の大きな怒りや不信・疑念を払しょくするために、例えば、車両に故意に傷をつけた行為者のみを器物損壊罪で起訴するなど、容易に起訴しやすい罪のみを捜査対象として今回の件を幕切れさせることなく、国民が期待する「本丸」にまでしっかりと切り込んで刑事責任を追及いただくことを期待しています。


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