TV・新聞など
平成29年1月19日 ポケモンGO死亡事故第1回公判
平成28年10月26日に一宮市で起きた、被告人川合信介がポケモンGOを操作しながらトラックを運転し、横断歩道を歩行していた則竹敬太君を死亡させた、過失運転致死罪の第1回公判が、平成29年1月19日午後2時30分から名古屋地方裁判所一宮支部301号法廷(村瀬賢裕裁判長)で開かれました。
弁護士丹羽は、則竹敬太君の父崇智さんの被害者代理人として、本公判に参加しました。
本公判の内容及び公判後の父崇智さんの思いを述べた様子は、各テレビ局や新聞社などで全国的に報道されました。
本公判では、双方提出の書証の取り調べの他、被告人請求情状証人である妻及び勤務先社長の証人尋問、及び、被告人川合の被告人質問までが予定されていました。
以下、第1回公判期日で明らかになった事実をお伝えします。
なお、お伝えする内容は、すべて本公判で検察官から読み上げられたもの、もしくは、証人尋問で明らかとされたものであり、傍聴していたマスコミ関係者及び傍聴人に明らかとなった事実となり、お伝えする目的は、スマートフォン使用によるながら運転の危険性を周知することでながら運転を撲滅し、これ以上敬太君やそのご遺族のように、ながら運転による交通事故の被害に遭う人を無くしたいとの思いからです。
冒頭手続
冒頭手続きで、検察官は、起訴事実として以下を挙げました。
・被告人は、トラックを時速約33キロメートルで運転し、38.2メートルの地点で、横断歩道右方歩道上に横断歩道を渡ろうとする下校途中の児童ら歩行者がいることを認めた。
・にもかかわらず、助手席シート上にスマートフォンの画面に表示させたゲームに気を取られ、前方左右を注視せず、横断歩道手前で一時停止せず、安全確認しないまま時速33キロメートルで走行した。
・上記過失により、横断歩道右方らか左方に横断中の則竹敬太君を前方約2.8メートルの地点に認め急制動を講じたが間に合わず、敬太君に自車前部を衝突させ、路上に転倒させた上、自車車底部で引きずるなどし、外傷性クモ膜下出血等の傷害を負わせ、出血性ショックにより死亡させた。
被告人の罪状認否では、被告人及び弁護人は上記起訴事実を全て認める旨認否しました。
検察官の冒頭陳述
検察官の冒頭陳述では、下記の点が陳述されました。
・被告人に速度超過違反など3件の交通違反歴があること
・被告人は、ポケモンGOを行う際、モンスターが出現する場所やポケストップに赴くにあたり、車を利用することが効率的と考え、勤務時間中の移動の際、スマートフォンでポケモンGOを起動させ、運転中にゲームを繰り返していた。
・これまで90種類のモンスターを獲得したが、その8割は車を運転中に獲得したものであった。
・本件事故が起きた平成28年10月26日、出勤途中や現場への移動の際もトラックを運転中にポケモンGOに興じており、同日だけで30体のモンスターを獲得し、57個のアイテムを獲得した。
・被告人は本件事故現場道路を週2~3回通っていた。
・被告人は、時速33キロメートルで走行し本件事故を起こしたが、本件事故当時、ポケモンGOでは、移動速度が時速32キロメートル以上になると速度制限画面が表示され、時速36キロメートル以上になるとモンスターを捕まえることができない設定となっていた。
検察官請求証拠の取調べ(供述調書の全文朗読)
通常の刑事裁判では、供述調書については、供述された内容のまとめが検察官から告げられることがほとんどですが(刑訴規則203条の2・要旨の告知)、本公判では、裁判長から供述調書の全文朗読が指示され(刑訴法305Ⅰ)、検察官は、1時間40分をかけ、目撃者、勤務先関係者、遺族、被告人の計16通の供述調書の記載内容全文を朗読しました。
その理由ですが、裁判官が供述内容をしっかり正確に把握したうえで、その後の証人尋問・被告人質問に臨もうとし、また、傍聴していたマスコミ関係者・遺族らに正確に供述内容を伝えたかったからと推測され、本件を慎重に審理していきたいとの裁判所の意向が見受けられました。
検察官請求証拠から明らかになったこと
被告人のポケモンGOの実施状況
・被告人は、平成28年7月後半からポケモンGOをやりだし、同年9月下旬にいったん中断したものの、本件事故の10日から1週間前から再開した。
・妻もポケモンGOをしていたが、事故の10日から1週間前に被告人にレベルが追いついたと話した。
・部下に、ポケモンGOを運転しながらやると効率が良いと話した。
・通勤や仕事の移動中の8割は運転中にポケモンGOをしていた。
・警告の画面が出ても、気に掛けることなくタップしてゲームの画面に戻していた。
・家族との運転中はポケモンGOをして運転したことはなかった。
・事故当日も3時間程度ポケモンGOをして運転していた。
・段々獲得したポケモンが溜まっていくことが楽しくなった。
・運転中にポケモンGOをしていても、これまで危ないと思ったことはなかった。
本件事故の状況
・被告人は、本件現場道路を週2~3回程度通っており、横断歩道が通学路であることを知っていた。
・被告人は時速約33キロメートルでトラックを運転し、横断歩道手前38.2メートルの地点で、横断歩道右方歩道上に横断歩道を渡ろうとする、黄色い帽子を被りランドセルを背負った下校途中の児童の集団がいることを目撃した。
・児童の集団は、自分のトラックに気付いており、横断歩道を渡ることはないと思い、横断歩道手前のポケストップでアイテムを取ろうと、スマートフォンを見た。
・2~3秒程度スマートフォンに視線を落とし操作し、視線を上げると、前方約2.8メートルに横断歩道を渡る敬太君に気づき、ブレーキをかけたが間に合わなかった。
・敬太君をトラックで跳ね飛ばし、敬太君にトラックを乗り上げ、24.4メートル進んで停車した。
・目撃者によると、被告人は事故後、敬太君に駆け寄ることも救護もせず、ふてくされた様子で突っ立っていた。
・事故当初、警察には、後ろめたかったのでポケモンGOをしていたことは話さなかった。
被告人請求情状証人の証人尋問
被告人側から情状証人の請求がなされ、弁護士丹羽は被害者参加代理人として証人に対し尋問を行いました。
次回以降の予定
今回の第1回公判では、被告人質問までが予定されていましたが、証人尋問までですでに3時間を経過しておりましたので、被告人質問は第2回公判に行われることになりました。
これに伴い、第2回公判は、当初の予定を15分早め、平成29年2月14日午後1時15分から開かれます。
なお、判決は同年3月8日午後1時30分の第3回公判期日に下されます。
第2回公判では、以下の手続きが予定され、結審となる見込みです。
・被告人質問(40分)
・敬太君の父の心情に関する意見陳述(30分)
・同母の心情に関する意見陳述(10分)
・論告求刑
・被害者参加人の弁論としての意見陳述(15分)
・被告人の最終陳述
TV・新聞など
- TBSテレビ報道局社会部からの、令和6年5月6日伊勢崎市内での飲酒運転トラックが対向車線に逸脱し5人を死傷させた暴走死亡事故についての危険運転致死罪への訴因変更についての取材について
- TBSテレビ報道局社会部からの、令和5年2月14日宇都宮市内での160Km/hの暴走死亡事故についての危険運転致死罪への訴因変更についての取材について(令和5年12月11日「Nスタ」放送)
- 糖尿病患者の低血糖による意識障害下での過失運転致傷罪の無罪判決(神戸地裁令和5年11月7日判決)についての取材について(令和5年11月21日読売新聞神戸版掲載)
- 令和3年4月尼崎市での一方通行路後退による危険運転致死罪の成否についての取材(令和5年10月27日朝日新聞朝刊兵庫県版掲載、同日NHK神戸放送局)
- 令和5年7月28日TBSテレビ「Nスタ」、ビッグモーターに関するニュースにリモートで生出演しました。
- 令和5年7月26日TBSテレビ「THE TIME」、同月27日同「Nスタ」、ビッグモーターに関する取材をいただきました。
- 令和5年7月25日放送NHKラジオ第1「Nらじ ニュースアップ」『ビックモーター 保険金不正請求問題』に出演しました。
- 令和5年7月20日朝日新聞本社朝刊「ビックモーター悪質な不正の手口、弁護士は『根底揺るがす大事件』」について取材をいただきました。
- 令和5年7月15日読売新聞大阪本社夕刊「事故前の車の走行状況『解明』、データ・レコーダー活用急拡大…新型車に搭載義務化」について取材をいただきました。
- R4.8.8放送 NHK国際放送「Learn Japanese from the News」出演
- 大型トラックの左折巻込み事故を防ぐために(令和4年6月3日中日新聞愛知県内版掲載)
- ウーバーイーツ配達員に対し業務上過失致死罪での起訴に関する取材(令和4年1月13日付朝日新聞デジタル版掲載)
- 平成28年6月宇都宮市の同乗者4名死傷事故の差戻審判決についての取材(令和3年3月23日朝日新聞朝刊栃木版掲載)
- 平成30年12月29日津市5人死傷事故控訴審の初公判に向けた取材と原審判決の評価(令和2年12月2日付朝日新聞朝刊社会面掲載)
- 池袋母子死亡事故初公判について電話取材がございました(AERAdot.10/8掲載)。
- 平成30年12月29日津市で発生した5人死傷事故での危険運転致死傷罪の成否についての取材
被害者側
交通事故専門弁護士による
ブログ
保険会社や病院の不適切な対応から専門家向けの高度な知識など、交通事故被害者にとって重要な情報を惜しみなく提供し、被害者側交通事故賠償実務の発展・向上に努めています。
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